2017 Fiscal Year Annual Research Report
味覚・嗅覚の感覚入力による口腔機能の出力制御メカニズムの解明
Project/Area Number |
16H05541
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
古郷 幹彦 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (20205371)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 晋 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (00367541)
山西 整 大阪大学, 歯学研究科, 招へい教員 (20397780)
青海 哲也 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (40713194)
宮川 和晃 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (50635381)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 嚥下 / 咀嚼 / 鼻咽腔 |
Outline of Annual Research Achievements |
継続して神経生理学の電気生理学の基本的テクニックを応用した。本研究ではこれまで継続してきた当研究室での研究成果を基にして、視床下部外側野において統合・伝達された味覚・嗅覚入力が、咀嚼に加えて嚥下活動という主要な口腔機能の発現をどのように調節するか、またこれらの活動を形成するセントラルパターンジェネレータ(CPG)をどのように修飾するか、その脳内メカニズムを多角的なアプローチによって解明することを目的としている。平成29年度は研究範囲を広げ、嚥下のみならず発声・発音に重要な鼻咽腔閉鎖機能を口腔機能出力として研究対象に含めた検討を行った。ビーグル犬を用いた鼻咽腔閉鎖機能不全動物モデルを作成し、その動物モデルへどのような鼻咽腔の形態的条件を付与した時に、鼻咽腔閉鎖運動が最も効率よく機能するかについて検討を行った。鼻咽腔閉鎖については、閉鎖圧および咽頭諸筋の筋電図を記録することによって評価を行った。咽頭閉鎖筋の再構築を行っても鼻咽腔閉鎖圧に大きな変化は認めなかった。一方で、軟口蓋鼻腔側粘膜の厚みを増加させると、最も効率よく鼻咽腔閉鎖圧が上昇した。本研究によって軟口蓋鼻腔側粘膜の厚みを増加させることによって鼻咽腔の閉鎖力を増強できるということが示唆された。さらにWhole brainstem spinal cord preparationにおいてはさらに実験条件をよくする検討を行い、組織の条件をよりよくするため改変を行った。次年度へ向けての条件も整えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、前年度の研究結果を臨床的な観点からより個別の機能へ演繹し、嚥下活動で重要な機能を受け持つ鼻咽腔閉鎖機能に注目した検討を行った。鼻咽腔閉鎖機能は嚥下のみならず発声にも必須の役割を果たしており、重要な口腔機能の一つである。今回の研究結果によって鼻咽腔閉鎖機能の局所制御メカニズムに軟口蓋鼻腔側粘膜の3次元的形態が深く関与していることが明らかとなった。この知見は臨床的にも応用できる重要な知見であり、総合的に本研究はほぼ予定通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には計画通りである。今後は再度ラットを用いた中枢神経制御メカニズムの研究に戻り、主要な神経ペプチドが嚥下活動発現に果たす役割を解明した後、嚥下活動を発現するために最小単位となる延髄スライス標本を作成する。このスライス標本を用いて細胞レベルにおいて、孤束核嚥下関連ニューロンの細胞膜特性を調べる。生後1-4日齢ラットから嚥下活動が誘発可能な延髄最小スライス標本を作製し、パッチクランプ記録法によって嚥下関連ニューロンの局在についての検討を行う。孤束核周辺で嚥下関連ニューロンを記録した際には、バイオサイチン(0.8%)を溶解したピペット内液を用いて細胞染色を行う。ギガシール樹立後細胞膜のラプチャー前にon cellモードにて、スライス標本から嚥下性活動を誘発し嚥下関連ニューロンと確認できた場合にのみ細胞膜のラプチャーを行い、これによって嚥下関連ニューロンに対する選択的なバイオサイチンによるマーキングを行う。その上で各種の電流コマンド入力に対する、細胞膜電圧の変化を記録し細胞膜の電気的特性を検討すると共に、主要な神経ペプチドが細胞膜特性に及ぼす影響を検討する。
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