2017 Fiscal Year Annual Research Report
北東シベリア永久凍土地帯のガス代謝と微生物群集の環境変動に対する応答
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16H05618
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
村瀬 潤 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (30285241)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 敦子 北海道大学, 北極域研究センター, 教授 (50235892)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 北東シベリア / ガス代謝 / 地球温暖化 / 微生物群集 / 湿地 |
Outline of Annual Research Achievements |
ロシア連邦サハ共和国インディギルカ川流域において夏季のミズゴケおよびスゲ植生湿地帯から採取した土壌は非常に高いメタン酸化ポテンシャルを示した一方で、現地での培養にもとづいて行ったDNAを対象とした安定同位体プロービング法によってメタン酸化に関与する微生物群集を特定するに至らなかった。微生物の増殖が条件となるDNAへの取り込みが十分でない可能性が考えられたため、13C標識メタンの16S rRNAへの取り込みを検証したが、RNAへの取り込みも明確でなかった。現地での培養実験の期間が十分ではなかったと判断し、国内に持ち帰った同土壌について13C標識メタンを添加した培養実験を再度行った。培養後の土壌からDNAを抽出、分画後、PCR-DGGEによる細菌群集の解析を行ったところ、13Cを取り込んだ群集を検出することに成功した。また、培養温度の違い(15℃、5℃)によって、異なる微生物群がメタン由来の炭素を同化していることが示された。 上記と平行して16S rRNA遺伝子を対象としたアンプリコンシークエンスの結果から、同土壌に生息するメタン酸化細菌群集の構成を推定した。この土壌に生息するメタン酸化細菌群集の中で、未分類のMethylocystaceae以外、典型的なType I, IIメタン酸化菌が占める割合は非常に低かった。一方、それ以外のメタン酸化菌として知られるCrenothrixやVerrucomicrobia (Methylacidiphilales)に近縁な配列が優占していることが示され、特に20cm以深ではCrenothrixに近縁を示す配列が卓越した。本研究で得られたメタン酸化菌の群集構成は、他の環北極域とは異なっており、地域によって異なる微生物群がメタンの代謝に関わる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
13C標識メタンを用いた安定同位体プロービング法によるメタン酸化微生物の特定は、国内での培養実験で一定の成果を挙げつつある。また培養温度の違いによるメタン酸化微生物群集の差が示されており、温暖化にともなう微生物群集の応答に関する示唆が得られるものと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
メタン酸化にかかわる微生物群集を、13C標識DNAを対象としたアンプリコンシークエンスによってさらに詳細に明らかにする。また、現場の土壌において活性を示していると考えられる微生物群集を16S rRNAを対象としたアンプリコンシークエンスにより明らかにし、安定同位体プロービング法による解析結果と比較する。
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Research Products
(3 results)