2017 Fiscal Year Annual Research Report
海洋景観遺伝学・ゲノム学アプローチによる黒潮圏のサンゴ個体群の維持機構の解明
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16H05621
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Research Institution | Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University |
Principal Investigator |
中島 祐一 沖縄科学技術大学院大学, 海洋生態物理学ユニット, 研究員 (50581708)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 一彦 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (50153838)
中村 雅子 東海大学, 海洋学部, 講師 (50580156)
御手洗 哲司 沖縄科学技術大学院大学, 海洋生態物理学ユニット, 准教授 (80567769)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 海洋生態 / 海洋保全 / 環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
南西諸島には400種以上ものサンゴが生息しており、種多様性豊かなサンゴ礁を形成しているが、近年の地球規模・地域規模の撹乱の影響でサンゴ礁の減衰が懸念されている。サンゴ個体群がどのように維持されているかを評価することは、個体群動態を予測する上で必要不可欠である。本研究では集団遺伝学・ゲノム学的手法を駆使してサンゴ個体群の遺伝解析を行った。大隅諸島、琉球列島、大東諸島、小笠原諸島のアザミサンゴ属で一塩基多型(SNPs)解析を行った結果、琉球列島内では個体群間のコネクティビティが高いこと、小笠原諸島は他の解析地域間とのコネクティビティが低く長期にわたるタイムスケールでも移住がほとんどないことが示唆された。このことは、地理的距離が遺伝的なコネクティビティを維持することに重要であること、飛び石状の生息地がない場合には幼生分散や分布拡大が制限されることを示す。また、前年度までに開発したマイクロサテライトマーカーのうち9遺伝子座を用いて、屋外水槽内のハナヤサイサンゴ属の親子関係を解析した。その結果、親候補となるハナヤサイサンゴ種を複数飼育していたものの、幼サンゴ25群体は1種類のハナヤサイサンゴ種に由来し、さらに無性生殖に由来するクローンであることが判明した。ハナヤサイサンゴのクローンは物理的な破片分散だけでなく、他の地域でも報告されている無性的なプラヌラ幼生の放出でも起こりうる。一方、人工的な飼育環境によるストレスでポリプの抜け出しが起こった可能性も考えられる。さらに、同じ属でも種類によって無性生殖のプロセスに大きな違いがある可能性も示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度同様、サンゴ個体群の減衰等の影響で、一部の地域での試料採取をまだ終えていない。未採取地域での採取を次年度に行い、広域での遺伝解析を可能にする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
アザミサンゴ属において広域でSNPs解析を行ったものの、ハナヤサイサンゴ属の解析に関しては局所的である。今後、アザミサンゴ属以外のサンゴでも広域での解析を行い、どのような影響が個体群間のコネクティビティに影響を及ぼすかを物理的な粒子拡散シミュレーション結果などと比較して、黒潮やその支流との関連性を考察する。また、サンゴの無性生殖が野外でどの程度行われているか、種類ごとの生理・生殖的な特徴が個体群の維持機構に影響しているかを検証する必要がある。
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