2016 Fiscal Year Annual Research Report
ニカラグア考古学調査と博物館づくりを通した地域の持続的開発と発展に向けた研究
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16H05665
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Research Institution | Kyoto University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
南 博史 京都外国語大学, 外国語学部, 教授 (00124321)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
嘉幡 茂 京都外国語大学, 京都外国語大学ラテンアメリカ研究所, 客員研究員 (60585066)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 先住民集落パターン / 文化財ガバナンス / コミュニティ・ミュージアム / ニカラグア先住民文化 / 持続可能なコミュニティ / フィールド・ミュージアム / 中米考古学 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.考古学学術的成果 ①研究の背景:考古学調査を実施しているラスベガス遺跡のマウンド(土盛遺構:住居または墓、祭壇と推定している)のおおまかな配置が明らかになっている。また、集落の中心と推定しているマウンド1の発掘調査の結果、これが祭壇であること、さらに上部で発見した石組み遺構が遺跡の東側に位置するキラグアの山並みとの関連している可能性を指摘し、その解釈として天体運行との結び付けた仮説を提唱した。 ②今期の調査成果:調査地の精密測量(10cm等高線)を実施した結果、マウンドの正確な位置と調査地の地形の凹凸が明確になった。それによると、中央広場を囲むマウンドとその外側に分布するマウンドの間が溝、または段状に区画されている可能性が指摘された。また、マウンドの配置が東側のキラグア山系のピークと対応する仮説をたてた。続いて、マウンド1の発掘では頂部に主体遺構と思われる落ち込みを確認した。 2.地域住民と協働した文化財ガバナンス研究成果:ティエラブランカ地域住民への調査報告会および現地見学会を通して先住民文化に対する理解を深める活動を行った。住民アンケート調査を行った結果、以下の「コミュニティ・ミュージアム」づくりに関連し、先住民文化に関する関心が高まっていることが明らかになった。 3.住民の直接的利益に結び付ける活動拠点「コミュニティ・ミュージアム」づくりに向けた成果:ティエラブランカ地区住民へのワークショップ「コミュニティ・ミュージアムって何?」を開いた。アンケートの結果、住民が主体となった「コミュニティ・ミュージアム」にむけて、「こどもたちのため」「自分たちの歴史を知るため」という意見が多く出た。また、それを観光に結び付け村を発展させていくなど住民自身の主体性を感じる回答が増えた。なお、マティグアス市長は、2018年度からコミュニティ・ミュージアム建設を始めると発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.考古学調査の進捗状況としては、まず調査対象地域の測量調査を予定通り終了したことである。また、マウンド1(祭壇)の発掘調査は主体部を確認できたことで、このマウンドの性格の確定に向けた調査を継続している。一方、出土遺物の分析については、登録・水洗・分類など順次基礎的な作業を終えていっているが、本格的な分析作業については未着手である。これは分析作業を行う施設を海外研究協力者の大学がある首都マナグアに設ける必要が出てきたため、その準備に時間がかかっているためである。 2.地域交流活動については、地域住民を主体とした文化財ガバナンス研究、つまりマティアグス郡キラグア山系西麓の文化財活用のための連絡協議会を設立するための準備を開始した。具体的にはティエラブランカ地区に隣接する地区など周辺共同体代表らが等しく意見を交換できる場を設けるための準備活動を行うことである。これについてはマティグアス市長の協力を得ており、具体的には来期からの活動になる。 3.コミュニティ・ミュージアムづくりを目的として、ティエラブランカ村小学校での住民が参加するワークショップ、アンケート調査を予定どおり実施している。マティグアス市長がコミュニティ・ミュージアムの建設を発表しており、この研究が予定通り進んでいるといえる。 4.調査評価と課題の検討については、住民など各アクターを対象とした現地報告会を開催し、また、上記のワークショップと遺跡見学会を実施している。 5.日本国内での整理・分析作業および成果報告については、国内調査拠点である京都外国語大学国際文化資料館に整理室を設け、調査資料(写真、図面、日誌)の整理を実施している。自然科学的分析は、現地での遺物分析作業の進捗状況の遅れから未着手である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.今後の考古学調査としては、まずマウンド1(祭壇)の発掘調査は優先して進めて主体部を明らかにする。そのうえで計画通り、測量調査で確定された広場的空間とモノリート、そしてマウンド1の位置関係を明らかにする調査を実施し、区画された集落内側の性格を明らかにしたい。一方、遺跡とキラグア山系との関係は、このラスベガス遺跡だけではなく、かねてから予備調査を続けてきたキラグア山系西麓の遺跡群を通して研究を進める必要が明らかになった。地域交流活動、つまり住民主体とする文化財ガバナンス構築に向けた研究と連携させていきたいと考えている。一方、出土遺物の分析についても、出土遺物が保管されている首都マナグアにある海外研究協力者の大学に近い場所に作業室を設けて本格的に開始する。 2.地域交流活動については、次期調査期間中にティエラブランカ地区に隣接する地区など周辺共同体代表を集めたワークショップを開催する。ここでは調査現状ならびに成果を報告し、マティアグス郡キラグア山系西麓の文化財活用のための連絡協議会を設立するための意見を交換する。これにはマティグアス市長の協力を得られることになっている。 3.コミュニティ・ミュージアムづくりについては、マティグアス市長が2018年にコミュニティ・ミュージアムの建設を発表したことで、2017年はその具体的な準備に入る予定である。ティエラブランカの住民が参加するワークショップを行い、博物館活動にむけた体制づくりを進める。 4.日本国内での整理・分析作業および成果報告については、引き続き国内調査拠点である京都外国語大学国際文化資料館に整理室を設け、調査資料(写真、図面、日誌)の整理を実施していく。また、現地での遺物分析作業に応じて、順次自然科学的分析をはじめていきたい。なお、調査成果の速報展を開催するなど研究成果の普及を進める。
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Research Products
(6 results)