2016 Fiscal Year Annual Research Report
Comprehensive Examination of Buddhist Meditation by Means of Digital Image Restoration Technology
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16H05667
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山部 能宜 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (40222377)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 禅観 / 仏教絵画 / 観経変相 / 敦煌 / 禅経 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず4月にバンコックのWorld Buddhist Universityで開催されたシンポジウムInternational Seminar on “Kumarajiva Studies”において、鳩摩羅什訳『坐禅三昧経』にみられる修行者の機根の分類に関する発表を行った。機根論はそれぞれの行者に相応しい行法を決定するために必要とされるものであり、禅観経典における修行論を理解するための不可欠の前提となるものである。 6月に敦煌で開かれた「漢伝仏経伝訳国際学術研討会」では、敦煌莫高窟第285窟側室の機能を論ずる発表を行った。本窟は一般には禅定の実践に使われたと解されることが多いが、側室の奥壁には円光をもつ禅定僧画像の微かな痕跡と思われるものが残っており、これらの側室は実は亡くなった高僧を記念するための影窟であった可能性が高いという私見を提示した。また、この発表からさらに視野を広げてクチャ・トゥルファン・敦煌の各地域における禅定窟の展開を論じる発表を、7月に國際基督教大学で開かれたThe Asian Studies Conference Japanで行った。この発表の内容は、後に『アジア仏教美術論集』への寄稿において論文化している。 12月には浙江工商大学において開催された国際シンポジウム「東亜文化交流―以画像為中心」において、画像復原の成果に基づきギメ美術館およびエルミタージュ美術館に所蔵される観経変相を比較検討して両者の間の関係を論ずる発表を行った。 3月にロンドンの大英博物館に出張し、同博物館の許可とご協力のもと高精度カメラを用いて敦煌絵画3点の可視光および赤外線による撮影を行った。この成果については現在処理・分析中であり、発表に向けた準備を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた中国での調査・撮影は現地の状況により本年度は実施できなかったが、その替わりに大英博物館所蔵の敦煌絵画の撮影・調査を行い、また国際シンポジウムでの発表4回、刊行論文1篇という成果を挙げることができたため、全体的な進展としては満足すべきものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度撮影した資料の処理・分析を進めて発表へとつなげたい。また、夏にはギメ美術館所蔵資料の撮影・調査を行う予定である。さらにはインド国立博物館およびエルミタージュ美術館の所蔵資料に関する予備的調査も併行して行いたい。また、画像の解釈のためには関係する文献(特に禅観経典)の分析が不可欠であるため、文献学的検討も進める必要がある。特に、私の禅観研究の原点である『観仏三昧海経』および『坐禅三昧経』に今一度回帰して再検討を行いたいと考えている。8月の国際仏教学会では、その成果の一端を発表する予定である。 中国での調査に関しては、現地担当者の交代などの事情で手続が遅れているが、引き続き交渉を進めて早期の実施を目指したい。
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Research Products
(8 results)