2017 Fiscal Year Annual Research Report
Comprehensive Examination of Buddhist Meditation by Means of Digital Image Restoration Technology
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16H05667
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山部 能宜 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (40222377)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 禅観僧 / 観経変相 / デジタル復原 / 『観仏三昧海経』 / 『観無量寿経』 / 『如来蔵経』 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、8月にトロントの国際仏教学会で、禅観僧壁画の重要な典拠の一つである『観仏三昧海経』の文献史的背景についての発表を行なった。本発表では、インド文献である『如来蔵経』の九喩と、中央アジア(現在の新彊)成立文献と思われる『観仏三昧海経』の念仏心に関する二種類の六喩の間にみられる類似性の意義を検討した。 また9月にはギメ美術館で敦煌絵画(観経変相および、下記クムトラ第75窟の正壁壁画と密接に関係する地藏十王図)の撮影を行ない、併せてフランス国立図書館で関係する写本・画稿の調査を行なった。 10月にはニューデリーの国立博物館に出張して、トゥルファンの禅観僧壁画および敦煌の観経変相に関する研究成果につき講演を行なうとともに、博物館所蔵資料の調査・撮影および研究打合せを行なった。また3月には重ねてニューデリーの国立博物館とインディラ・ガンディー国立芸術センターに赴いて、前年度3月に大英博物館で撮影した観経変相に関する発表を行なうとともに、今後の調査に向けての再度の打合せを行なった。敦煌はじめヨーロッパやインドの博物館に多くの観経変相の作例が現存しているが、それらの多くには典拠である『観無量寿経』から逸脱する点が多く見られる。それは画師達が経典を参照することなく、先行作例と画稿に基づいて制作したため徐々に誤解が蓄積された結果であることが、比較研究によって明かになるのである。 また、本年度はクムトラ第75窟の壁画および題記に関するデジタル復原の成果とその解釈を論じる論文を、『絲綢之路研究』に発表することができた。本論文では、退色が著しく判読が極めて困難な同窟正壁下部の漢文題記を可視化して解読し、その内容が四無量観を中心としたもので、それが正壁に描かれている正面向きの禅観僧およびそれを取り巻いて描かれている六趣の図像を説明しうるものであることを、文献資料に基づいて明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の通り、美術・文献の両面から禅観実践の解明を進め、その成果を多くの機会に発表することができた。そのため、研究は概ね順調に進展していると言ってよいであろう。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、ニューデリー国立博物館所蔵のスタインコレクションを中心に研究を進めたいと考えており、そのため二度の現地訪問と打合せを重ねてきた。また、それと併行して中国の管理当局とも連絡を保ち、今後の調査と研究発表について意見交換を重ねている。当面、クムトラ第75窟の壁画および題記に関する中国語論文の英語版の刊行準備を進めたいと考えている。
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Research Products
(4 results)