2017 Fiscal Year Annual Research Report
先住民の植民地経験の語りの両義性ー謝罪と和解をめぐる文化人類学的・学際的研究
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16H05689
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
窪田 幸子 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (80268507)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アボリジニ / 語り / ライフヒストリー / 歴史 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画2年度目にあたる本年は、8月に4週間の長期調査を行なった。これまで蓄積してきている、ライフヒストリーの聞き取りを継続、さらに深めていった。これまでの調査で、主たる被調査者であるガンダマ氏、その母に当たるグイワンガ氏、そして、ガンダマの親戚筋にあたるビープカ氏の3名の女性の話が互いに関係しており、共鳴していることがわかってきたたため、この三人を中心として、さらにライフヒストリーを収集していった。彼らの語りは、歴史を肯定的にとらえているものが圧倒的であり、同時に彼ら独自の歴史語りのあり方が明らかになってきた。彼らの歴史は、個人の人生の中に納まらず、祖先、そして神話へとつながる独自なものである。その一方で、現代的な問題とも重なり、そこでは他者である白人に対するステレオタイプな批判的語りも見え隠れする。 また、親戚筋の男性からも話を収集することが可能になり、聞き取りを開始した。女性とは異なる、歴史と神話の語りが興味深い。今後こちらも継続し、女性の語りとの比較につなげたい。 これらの成果については、国内集会を行い、複数の研究者と共有し、アドバイスをいただいた。同時に、ソウルに滞在していた海外協力者のドュサート氏との研究うちわせを行った。もう一人の協力者であるジョーンズ氏とは、シドニーでの研究打ち合わせを行った。成果の一部は、香港での東アジア人類学会、アデレードでのオーストラリア人類学会で発表を行った。また、他科研で、3月にオーストラリア調査を行った際、ガンダマ氏らの聞き取りも補充した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対象者が老齢であるため、体調を見ながら調査を薦めなくてはならず、時に調査が困難な日もあったが、基本的には、全員が大変協力的で、順調に進んでいる。重要な論点も見えてきつつあり、中間的成果として論文にまとめることも視野に入れている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も継続して調査を行い、ライフヒストリーを収集、その精度を上げたい。また、本年度始めた、男性のライフヒストリーの収集を拡大、継続し、両者の比較を行いたい。ライフヒストリーをとることで、アボリジニ社会の具体的な在り方が、改めて浮き彫りにできると感じている。次年度には、国際研究集会を開催するとともに、中間まとめとしての論文執筆、発表を行う予定である。
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Research Products
(8 results)