2018 Fiscal Year Annual Research Report
先住民の植民地経験の語りの両義性ー謝罪と和解をめぐる文化人類学的・学際的研究
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16H05689
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
窪田 幸子 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (80268507)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | オーストラリア / 先住民 / 語り / 両義性 / 記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
この研究は、先住民の植民地経験と暴力、そして、それに対する謝罪と和解という極めて現代的な問題を、先住民による「語り」から考察する。和解の文脈で、しばしば癒しのツールとして使われる先住民の「語り」であるが、それは時に均質化の様相を見せ、一方で具体的で多様な個別の経験を強く伝える。この研究は、こうした「語り」の二面性に注目し、歴史経験の「語り」が持つ力、個々の先住民の人々にとっての意味を考察する。申請者の調査地では、20世紀半ばに植民地統治が始まった。この時代を記憶している人々が老齢化する中で、語りの多様性と均質性という問題の考察とともに、貴重な彼らの立場からの歴史的経験を記録することも、この研究のもう一つの大きな目的である。 研究は、これまで順調に先住民女性たちを中心として、歴史経験の語りを聞き取り、蓄積きた。3年目にあたる昨年度は、調査者と調査地のインフォーマントの私的事情が重なり、予定していた長期調査はかなわず、短期にフォローアップを行うのみとなった。しかし、語りの特質は明らかになってきており、学術的に検討すべき論点が明確になってきた。これまでの成果にもとづき、中間的にとりまとめとして、国内集会を持った。その成果は論文として発表予定である。 海外研究協力者との国際研究集会を持つことができなかったが、次年度に、国際研究集会を開催し、これまでの成果について、議論を交わす予定である。その場に、語りの本人であるアボリジニ女性に参加してもらう可能性も模索中である。 次年度の終わりまでには、研究全体の方向性について見通しを立てる予定で、その準備は十分に整っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
調査者の私的事情により、夏に長期調査が出来なかった。また、インフォーマントのほうにも私的事情が生じたため、短期調査においても十分な調査が出来なかった。 そのため、国内において、これまで蓄積したデータを整理し、研究集会を複数回行い、研究の見通しと、次年度以降に研究遂行すべき点を洗い出した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降の調査に向けて、今年は国内で、これまで蓄積したデータを整理し、研究集会を複数回行い、研究の見通しと、次年度以降に宙申すべき点を洗い出した。これにもとづき、今年度は長期の調査を行い、必要なデータを収集する。これまでの中心的に聞き取っていたインフォーマントは困難である可能性もあるので、聞き取りすべきポイントをいくつか整理したうえで、同じ年代の女性たち、そして、一世代下の女性たちにも聞き取りを行う。それにより、より豊かな、時代的にも幅のある記憶について検討することが可能になる。
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Research Products
(5 results)