2019 Fiscal Year Annual Research Report
先住民の植民地経験の語りの両義性ー謝罪と和解をめぐる文化人類学的・学際的研究
Project/Area Number |
16H05689
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
窪田 幸子 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (80268507)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | オーストラリア / 先住民 / 語り / 記憶 / 両義性 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度、研究代表者の家族の健康問題によって十分に果たせなかった調査を、計画の4年目である本年にまとめて推進した。9月に、ニュージーランドでの歴史的なトラウマ経験についての聞き取り調査を比較の視点から行なった。今年度後期は、研究休暇を得、11月後半からから2か月余りのオーストラリアでの現地調査を行った。 アーネムランドの調査地では、ライフヒストリーの聞き取りをさらに広げ、より若い世代を含めてライフヒストリーと、神話についての話を聞いた。かなりの量が蓄積でき、現在整理中である。また、シドニーでは、研究協力者のゲイル氏との研究打ち合わせを行い、来年度に予定している国際集会の可能性を探った。アボリジニを招へいしての国際研究集会のための準備を開始し、来日の意向も確認した。 その一方で、バンクーバーで開催されたアメリカ人類学会、インドで開催された人文学ワークショップなどの国際会議で、トラウマの語りについての研究発表を行った。また、これまでの成果について論文の出版も行った。昨年度までに、国内の歴史学研究者や国際政治学者と、紛争の歴史記憶をめぐる議論を行い、多くの問題意識の重なりがあることが割ってきていた。今年度さらに国際学会などでの意見交換から、さらなる共通の問題意識と、和解の問題につながる論点が見えてきた。このような学際的視点からもヒントを得て、語りの多様性と均質性という当初の問題意識にかかわっての議論をまとめているところである。 また、先住民であるアボリジニの立場からの歴史的経験を、まとめる作業も本年度から開始した。アボリジニの立場からの歴史語りからは、独自の語り方、独自な記憶の表現のしかたがある。アボリジニの人々の家族史として重要な意味を持つものであることがさらに強く感じられるようになった。調査地への還元の一部として、これらを形にしていく作業に入っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インフォーマントの一人がなくなり、ほかのメンバーも高齢化がすすみ、病気になる人がでるなど、調査開始時点からは状況は変わってきている。しかし、死亡したインフォーマントの一人からは、ほぼ話を聞き終えており、それ以外の家族に調査、聞き取りの対象を広げた結果、当初の予定していた調査は、ほぼ計画どうり達成される見込みである。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、補充のための調査を行い、それらをあわせてとりまとめを行い、論考として学会なので発表し、出版を予定している。 その一方で、研究協力者を招へいし、国際研究集会を日本で開催する予定である。そのとりまとめも、学会誌などに発表する。 その上で、最終的な研究成果として論考を取りまとめる予定である。また、当初からの課題であった、家族史としての彼らの記録も文書化し、現地還元する。
|
Research Products
(10 results)