2018 Fiscal Year Annual Research Report
資料返還をめぐる先住民と博物館との新たな関係性の構築に関する文化人類学的研究
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16H05694
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Research Institution | Hokkai-Gakuen University |
Principal Investigator |
出利葉 浩司 北海学園大学, 人文学部, 客員研究員 (40142088)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
手塚 薫 北海学園大学, 人文学部, 教授 (40222145)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 資料返還 / 博物館 / 先住民族資料 / 民族知返還 / 遺骨返還 / ポストコロニアル |
Outline of Annual Research Achievements |
構成メンバーは、代表者出利葉浩司(北海学園大学)のほか、分担者として手塚薫(北海学園大学)、研究協力者として伊藤敦規(国立民族学博物館)、太田好信(九州大学)、窪田幸子(神戸大学)、慶田勝彦(熊本大学)である。 今年度は、Denver Museum of Nature & Science(アメリカ合衆国コロラド州)、Anchorage Museum(同アラスカ州)、Arctic Studies Center, National Museum of Natural History(同ワシントンDC) およびAmerican Museum of Natural History(同ニューヨーク市) を訪問し、資料返還の状況およびそれが展示や刊行物においてどのように公表されているかについて、とくにアンカレジでは展示企画段階での先住民代表との共同調査状況の聞き取りをおこなった。個別調査では、窪田がオーストラリアの返還の歴史的背景について、ガイドラインが成立した時代的状況などをニューヨーク在住の研究者から聞き取りをおこない、出利葉が合衆国国立自然史博物館が所蔵する写真資料についてのシベリア先住民との情報共有の方法について、聞き取りをおこなった。 また、資料返還における先住民側と博物館との間のさまざまなできごとについて注目してきたジェームズ・クリフォード博士を招聘し、意見交換をおこなった(北海道大学、国立民族学博物館と協同で招聘、公開講座を開催)。 窪田は学術会議第一部の会員として「歴史的遺物返還に関する検討分科会」を開催し、太田とともに参加、そこで成果の一部を発表している(於;札幌市、成果は別途報告予定)。 普及活動として、出利葉、手塚は、恵庭市図書館において一般市民向けの講演会をおこない、世界各地の博物館において先住民族から収集した資料の返還がおこなわれている事実および状況について説明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由 調査は、おおむね順調である。昨年に引き続き、資料返還について積極的に活動をおこなってきた博物館を訪問することができた。個々の事例や課題についての詳細な情報もあつまっており、関連する文献など資料の収集もおこなうことができた。研究成果の発表については論文形式のものがやや低調である。成果の発表という点については、その一部を2019年にアメリカ人類学会 (AAA) での発表を計画中であり、すでに申請をおこなっているところである。また、最終報告として出版物とすることを計画しており、すでに準備に入っている。口頭発表では、学会のみならず一般向け集会においても積極的に「博物館資料の返還とその課題」について言及しており、研究動向はさておき、すくなくとも諸外国ではそのような社会的状況にあることについての普及をおこなってきた。現在、博物館がかかえている課題について、限られた場所ではあるものの、ひろく市民に普及できたことは評価できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究メンバーは、代表者である出利葉浩司(北海学園大学)のほか、手塚薫(北海学園大学)が分担者になり、研究協力者として伊藤敦規(国立民族学博物館)、太田好信(九州大学)、窪田幸子(神戸大学)、慶田勝彦(熊本大学)の6名を中心メンバーとして、引き続き推進していく。 今年は最終年度であり、成果の学会発表および刊行の準備をおこなうなかで、同時に今後に向けた課題の検討もおこなう。本研究課題は、もちろん日本国内だけの問題ではなく、さらに日本国内での状況を世界的なうごきのなかで考えていく必要もあるため、その一部を11月にバンクーバーで開催されるアメリカ人類学会で発表することを予定し、申請中である。また、出版物としての刊行も計画しているが、そのための打ち合わせなどが必要であり、この点は今後、考えていく。
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Research Products
(13 results)