2017 Fiscal Year Annual Research Report
Latitudinal pattern of methanotrophic food webs driving carbon and nitrogen cycling in lakes
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16H05774
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
奥田 昇 総合地球環境学研究所, 研究部, 准教授 (30380281)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 雅之 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 助教 (70456820)
藤林 恵 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (70552397)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | メタン / メタン酸化細菌 / NC10 / メチル栄養細菌 / メタン栄養食物網 / 炭素・窒素循環 / 熱帯部分循環湖 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)セブンレイクス:7つの火山湖沼群で月例湖沼物理観測を実施した結果、水深30m以上の湖が部分循環湖となることが判った。いずれの湖でも雨季から乾季の変わり目に表層で鉛直混合が観察され、季節風に伴う気温低下が主要な混合メカニズムであると示唆された。さらに、水深30m以上の3湖沼において、メタンの季節・鉛直プロファイルを調べたところ、底層の貧・無酸素層で高濃度の溶存メタンが検出された。また、pmoA遺伝子のDNA配列に基づいてメタン酸化細菌(MOB)を同定したところ、いずれの湖沼でもType I、Type II、NC10が出現した。しかし、脂肪酸分析を用いて動物プランクトンに含まれるMOB特異的脂肪酸を定量したところ、二次生産への寄与は極めて小さいことが判った。 2)翡翠水庫:冬季の不完全循環が翌夏の成層期のメタン貯蔵に及ぼす影響を評価するため、2012年から2018年までメタンプロファイル調査を継続した。この長期観測データにより、暖冬年に不完全循環が起こると、続く成層期にメタン貯蔵が増大することが判った。さらに、嫌気的メタン酸化細菌NC10の季節・鉛直プロファイルを調べたところ、メタン貯蔵が発達するにつれてNC10が表層方向に分布を拡大する様子が捕捉できた。脂肪酸分析により、二次生産への寄与は低いものの、メタン貯蔵の発達期に動物プランクトンによるNC10特異的脂肪酸の取り込みが増加することを確認した。 3)琵琶湖:2016年の冬季に北湖盆最深部地点にて採集したメタンとMOBの鉛直プロファイル試料を解析したところ、水深90m層において低濃度のメタン亜極大が検出された。MOB計数の結果、水深90mにおいて低密度ではあるものMOBの3型が検出された。次世代シークエンスを用いた解析でも90m層にMOB群の分布極大が検出され、琵琶湖において初めて水柱からMOBの存在が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)湖沼のメタン栄養食物網の緯度間比較:日本・台湾・フィリピンの3つの気候帯に属する湖沼を比較することにより、低緯度湖沼ほど部分循環傾向が強くメタン貯蔵が発達しやすいという予測通りの観察結果を得ることができた。特に、翡翠水庫の長期観測データに基づいて、厳冬・暖冬の年変動が湖沼の鉛直循環とメタン動態を左右する重要な気象要因となりうることを実証できた。本研究成果はEcological Researchに公表され、温帯湖沼の温暖化影響に関する示唆に富む内容が評価され、論文賞を受賞した。また、メタン栄養食物網の定量解析ツールである脂肪酸分析のNC10市販マーカーが入手できたことにより、3湖沼の比較研究を確立できた。当初の予測に反して、メタン栄養食物網の発達はメタン貯蔵と無関係であることが明らかとなった。無酸素層における動物プランクトンの行動生理的な制約による移動制限がMOBの二次生産への低い寄与率をもたらすかもしれない。 2)熱帯湖沼の循環パタン:これまで熱帯湖沼ではスナップショット的な観測しか行われてこなかったが、本研究で月例湖沼物理観測を実施したことにより、熱帯湖沼における季節的鉛直循環を観察することができた。さらに、7つの湖沼群を比較することにより、一回循環湖と部分循環湖の深度境界が30m付近にあることを明らかにできた。 3)NC10純粋培養実験:脂肪酸分析用マーカーの開発を目的としてNC10の純粋培養実験を試みてきたが、NC10は安定的に増殖せず、代わりにメチル栄養細菌が優占した。培養がうまくいかない理由は、本分類群の低い増殖率と狭い環境選好性によると思われる。様々な培養条件下でNC10およびメチル栄養細菌の増殖条件を比較検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
1)熱帯湖沼の集中観測調査:熱帯湖沼の季節的鉛直循環の物理メカニズムを明らかにするために昨年度に計画した高時間解像度観測調査が台風の影響で延期となったため、今年度の繰り越し期間に実施する。予算残額が限られていることから、長期滞在調査ではなく、水温・溶存酸素・気温・風速・風向ロガーを付属した係留系を台風と季節風が通過する2つのシーズンにセブンレイクスのヤンボ湖(一回循環湖)に設置して観測調査を実施する。 2)MOBの群集構造および分子系統地理:セブンレイクスと琵琶湖におけるMOB群集の季節・鉛直プロファイルの解析が遅れていることから、CARD-FISHによるMOBの計数作業に注力する。また、各湖沼から得られたMOBのpmoA遺伝子配列のDNA配列情報に基づいて、分子系統地理解析を実施する。 3)MOBによる窒素補給と栄養カスケード:翡翠水庫では、動物プランクトンにおけるMOB生産寄与率とそのC/N比に負の相関が認められ、MOBによる窒素補給(Nitrogen subsidy)が示唆されている。窒素欠乏の本湖沼において、MOBによる窒素補給が二次生産や表層の一次生産に及ぼす栄養カスケード効果を検証するために、共同研究者によって取得された各種環境資料・生物試料の長期データセットを収集・整理し、解析に供試する。
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Research Products
(22 results)
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[Journal Article] Prevailing environmental conditions influence mollusk diversity and distribution around Talim Island of Laguna de Bay (Luzon Is., Philippines)2017
Author(s)
Peralta, E. M., H. J. A. Guerrero, C. G. S. M. Arce, J. J. A. Domingo, M. A. Maute, M. D. S. San Miguel, E. M. C. Trino, I. B. B. De Jesus, J. C. A. Briones, F. S. Magbanua, N. Okuda, R. D. S. Papa
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Journal Title
The Antoninus Journal
Volume: 1
Pages: 31~39
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Presentation] Evaluation of methane emission from a mid-latitude lake with the eddy covariance technique2017
Author(s)
Iwata, H., Hirata, R., Takahashi, Y., Itoh, M., Iizuka, K., Miyabara, Y., Kobayashi, D., Tokida, T.
Organizer
Physical Processes in Natural Waters
Int'l Joint Research
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[Presentation] Evaluation of methane emission from a mid-latitude lake with the eddy covariance technique2017
Author(s)
Iwata, H., Hirata, R., Takahashi, Y., Itoh, M., Iizuka, K., Nakazawa, K., Satoh, H., Kobayashi, D., Tokida, T.
Organizer
AsiaFlux Workshop
Int'l Joint Research
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