2016 Fiscal Year Annual Research Report
カンキツの分類と種の起源・伝播の解明-田中標本の解析と人文・社会学的調査ー
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16H05781
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北島 宣 京都大学, 農学研究科, 教授 (70135549)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 雅史 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 教授 (00305161)
伊藤 謙 大阪大学, 総合学術博物館, 特任講師(常勤) (00619281)
米森 敬三 龍谷大学, 農学部, 教授 (10111949)
安冨 歩 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (20239768)
山崎 安津 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門, 研究員 (70582584)
清水 徳朗 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門, 上級研究員 (90355404)
深尾 葉子 大阪大学, 経済学研究科, 准教授 (20193815)
中崎 鉄也 京都大学, 農学研究科, 准教授 (60217693)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 園芸学 / 分類学 / 東洋史 / 博物学 / 社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
台湾大学に保存されている田中のカンキツさく葉標本を整理・分類し、リストアップを行った結果、カンキツ属は618点、カンキツ近縁属は323点で合計941点であった。カンキツ属のうち475点は田中の分類による学名のものであり、53種が含まれていた。他の143点は田中の分類による学名ではなく、イタリアの試料が多かった。カンキツ近縁属のうち142点は田中の分類による属名のものであり、他の181点は中国、フィリッピン、オーストラリアの試料が多かった。DNA抽出方法の確立では、採取直後の葉に加熱処理を行ってDNA抽出方法を検討し、その結果をもとに田中のさく葉標本5点を用いてDNA抽出を行った結果、3点は十分なDNAを抽出できたが2点はDNA抽出ができなかった。このことから、さく葉標本からのDNA抽出方法が確立され、標本の状態によりDNAが分解されていると考えられるので、さく葉標本からのDNA抽出にあたってはさく葉標本の状態を吟味する必要がある。 台湾在来のシークワーサ調査を行った結果、果実の形態は沖縄のものとやや異なっており、同一のものではないと考えられ、現在、DNA解析中である。 田中長三郎と交流のあった南方熊楠や橘本神社宮司の前山家との書簡等の資料調査を行うとともに、新規資料を発掘した。また、田中長三郎の最後の弟子である森本氏が保存している資料の調査を行った。これらの現存資料のリストを作成中である。また、台湾大学における田中文庫の目録を作成中である。 台湾大学の研究協力者を招聘し、研究分担者とともに本研究内容について講演を行う国際シンポジウムを京都と和歌山で開催し、多くのカンキツ研究者や栽培関係者および和歌山の行政関係者などの参加により盛況であった。とくに和歌山県議からは田中長三郎をアピールするための展示会開催について打診があり、現在、平成30年度に和歌山と台湾で開催する検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
台湾大学における田中標本の整理・分類については、保存されている941点の標本に記載されている学名および国名の整理・分類が行われ、そのデータは本研究参画者に配信されており、順調に進捗している。また、さく葉標本からのDNA抽出方法の確立についても本年度の目標を達成しており、進捗状況は順調である。 ニューギニアにおけるクリメニア属在来カンキツ調査については、ニューギニアの政情が不安なことから現在ペンディングとしているため、本年度は台湾の在来シークワーサの探索を行い、その在来種を発見して調査を行った。海外の在来カンキツ調査についての進捗状況はやや遅れている。 中国・台湾における歴史的なカンキツ栽培利用と社会情勢に関する人文・社会学的調査については、中国広東省のブンタン栽培について調査を行っており、進捗状況は遅れている。 田中長三郎関連文書資料の整理・分類とアーカイブ化については、南方熊楠顕彰館保蔵資料調査により、南方熊楠との交流書簡・資料等を発掘したこと、我が国にカンキツを初めて導入した但馬守を祭る橘本神社宮司の前山家に保存されていた田中長三郎の多くの書簡を発掘したこと、田中長三郎の弟子である森本順平氏が保管していた田中長三郎の資料を発掘したことなど大きな成果が得られており、予想以上の進捗状況である。また、本研究の国際シンポジウムを開催したことや、そのことにより田中長三郎の展示会開催の計画が進展していることなど、予想を超えた進捗がみられている。 以上より、全体的にはおおむね順調に進捗していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
台湾大学における田中標本の整理・分類については、標本画像を整理して標本データとリンクさせたデータベースを作成し、アーカイブ化を進める。さく葉標本からのDNA抽出については、抽出に適したさく葉標本を明らかにし、抽出したDNAによるSSR解析を試み、その解析条件を確立する。 海外の在来カンキツ調査について、田中標本データに基づきインドアッサム地域およびオーストラリアの在来カンキツを探索・調査し、DNAを採取する。また、韓国の在来カンキツの探索・調査を行い、これまで未調査であった地域をカバーする。さらに、中国・台湾における歴史的なカンキツ栽培利用と社会情勢に関する人文・社会学的調査を継続するとともに、韓国においても同様な調査を行う。 田中長三郎関連文書資料の整理・分類とアーカイブ化については、発掘した資料を整理・データ化するとともに、さらに新たな資料の発掘を行う。また、台湾大学の図書・文書資料の調査・整理を行い、データ化を促進して、日本・台湾の田中長三郎資料の統合化とアーカイブ化を促進する。 田中長三郎資料の展示会について、平成30年度に台湾大学と和歌山県での開催に向けて両者との協議を重ねて計画を具体化する。
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Research Products
(9 results)