2017 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯乾燥季節林の水分ストレスと火災が炭素循環に与える影響評価と森林再生への対策
Project/Area Number |
16H05787
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
安立 美奈子 筑波大学, 生命環境系, 助教 (40450275)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 高尚 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (10357981)
吉村 謙一 山形大学, 農学部, 准教授 (20640717)
石田 厚 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (60343787)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 熱帯乾燥季節林 / 土壌呼吸速度 / 光合成 / 樹液流束速度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はタイの熱帯乾燥季節林において強い乾燥や火災が森林の炭素循環に及ぼす影響を明らかにするため、1)樹木の生理応答と炭素固定能、2)土壌の炭素動態および栄養塩循環を中心とした研究を行うことを目的としている。 今年度は主に火入れ実験調査のための研究体制の整備を行った。1.5ヘクタールの調査区内にコントロール区と火入れ区のそれぞれを設置し、乾燥季節林における代表的な2種の樹木を各区の中から1本ずつ選び、合計4本の樹木において光合成測定および樹液流束速度などの観測がおこなえるよう簡易タワーを設置した。各タワーは樹冠の葉にアクセスできるような構造になっており、さらにメイン電源から各タワーに配電できるように整備をおこなった。これにより雨季と乾季の光合成量の違いや、樹液流束速度の連続測定が可能になり、来年度より調査を開始できるようになった。また、火入れ区には土壌呼吸速度および環境要因(地温と土壌水分)の連続観測ができるシステムを新たに導入した。土壌呼吸を測定するチャンバー数は5つであり、来年度にはこの中から2チャンバーを根切り区とすることにより、根の呼吸量を分けることができる。土壌呼吸の連続観測システムはすでに稼働しており順調に観測を始めている。 火災による樹木の枯死率を調べる調査を行うため、火入れ区内に存在する、樹木の地際直径が2cm以上の実生についても樹高やプロット内の位置などを調査する予定であったが、調査の前に調査地で予期せぬ火災が起きたため、枯死率の研究についてはしばらく見送ることになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究項目について観測を行うための整備を中心に行い、整備はほぼ完成している。特に簡易タワーの設置と各タワーへの配電作業は完了しており、来年度の観測に向けての準備は整っている。さらに、土壌呼吸速度の連続観測についてはすでに開始しており、データを見ながら根切り区の選定を行っている段階である。ただし、研究実勢の概要にも記載したが、調査区内の火入れ区では、火災による樹木の枯死率を調べる調査を行う予定であったが、調査の前に調査地に予期せぬ火災が起きたため、火入れ区の枯死率の研究についてはしばらく見送ることになった。
|
Strategy for Future Research Activity |
観測環境の整備は整ったので、光合成量や樹液流束速度の季節変化の観測を開始する。雨季と乾季、乾季における火入れ前後について集中的に調査を行うことで、乾燥や火災が樹木生理活性に及ぼす影響の解明を目指す。また、土壌呼吸速度の連続観測はすでに開始しているので、今後は根切り区チャンバーの選定と設置を雨季におこなって、土壌呼吸速度における根の呼吸の割合や、その季節変化を明らかにする。1回目の毎木調査をおこなって、熱帯乾燥季節林のバイオマス量の推定などを行う。これらのデータを元に、陸域生態系モデルによる計算も開始する。
|