2017 Fiscal Year Annual Research Report
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16H05901
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
日高 翠 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 講師 (40704680)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 壁画 / コソボ / 修道院 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在のコソボ地域において中世後期に制作された教会堂壁画について、壁画がどのように描かれたかを美術史、実測、保存修復、材料分析の各調査を通して考える。コソボ自治州内の4つの修道院・教会堂にある7つの教会堂・聖堂の堂内に描かれた壁画を取り扱う。 今年度は、史料調査および保存修復調査(材料調査)を中心に研究を進めた。 これまでの史料調査で見つかった、20世紀中のコソボ領内の修道院を写した4000枚以上のフィルム写真について、半分以上をデジタル保存することができた。また、その一部については、三次元的に合成することができた。これらの資料を精査したことで、20世紀中に頻繁に行われた補修工事や修復作業の具体的な内容、時期がいくらか明らかとなった。現存記録の少なかった時期の出来事が明らかとなったことは、大きな成果の一つである。 保存修復の調査では、グラチャニツァ修道院でのセルビア文化省の組織する修復チームに参加し、実際に修復作業を行うとともに、壁画表面の顕微鏡観察や一部の材料分析を行った。昨年度同様、箔装飾に焦点をあてて実施した。金箔の下のとのこ層の分析から、金属箔は、教会堂の意味や図像、描画位置によって材料を変えている可能性が指摘でき、昨年度までの仮設を支持する情報が得られた。また、画材としては珍しい塩化銀を検出した昨年度の材料調査結果について、文献で調査を進めるとともに、国内外の学会やワークショップに積極的に参加し、専門家との意見交換を行った。塩化銀がオリジナルであるかどうかの検証が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究対象としている修道院への訪問も慣れてきて、修道院関係者とも密に連絡を取っているため、順調に現地調査を遂行することができた。修復作業への参加については、例年、場所も期間も直前に決定し、期間中の変更も頻繁であるため、臨機応変な対応が求められ、日本から事前に情報を得ることが大変難しく、全日程の参加が困難な場合がある。
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Strategy for Future Research Activity |
夏季、秋季に現地調査を実施する。史料調査で得られた壁画の過去の様子を参考に、修道院の現状との正確な比較データを得る。材料調査では、金属箔の装飾において、当時の画家らが図像や描画位置によって材料の配合を意識的に変えていたのではないか、という仮説を支持するデータを蓄積していく。
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Research Products
(8 results)