2017 Fiscal Year Annual Research Report
Maritime Archaeology of Manila Galleon and shipbuilding technology
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16H05945
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
木村 淳 東海大学, 海洋学部, 講師 (80758003)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 水中考古学 / 水中遺跡 / マルチビームソナー音響測深 / 磁気探査 / サンフランシスコ号 / ガレオン交易 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度「サンフランシスコ号海事考古学調査とガレオン交易船の造船技術に関する国際研究」では、千葉県夷隅郡御宿町沖合いで、リモートセンシング探査と潜水調査を実施した。探査・調査の範囲は、1609年にサンフランシスコ号が沈没、生存者が上陸したとされる田尻海岸(千葉県指定史跡「ドン・ロドリゴ上陸地」)沖の海域である。昨年度から継続してマルチナロービーム音響測深機(米国Sonic社製)による海底地形計測を、2017年6月12-29日、9月4-6日に実施(昨年度は2016年7月・2017年1月)、1回目の計測で、1.3kmx2.1kmと3x2.1kmの2ブロックの海底地形、2回目の計測で沖合い6kmの岩礁、真潮根周辺の1.5kmx1.2kmの範囲を計測した。2017年10月27日‐11月5日の期間で、国内の水中遺跡調査では、倉木崎海底遺跡に続き2例目の海洋磁気探査(ジオメトリック社製G882)を実施した。真潮根及び周辺海域で、磁気異常が検出された。水深40m弱の海底で、潜水による目視調査を3名で実施した。海底では、加工したと思われる球状の石や木片などが検出されたが、サンフランシスコ号との関連性は現時点では不明である。 本研究の進捗は2017年7月21-23日に中国廈門大学で開催された「Archaeology of the Seaports of Manila Galleon and the History of Early Maritime Globalization」国際会議及び香港海事博物館で開催された3rd Asia-Pacific Regional Conferernce on Underwater Cultural Heritageで報告された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2ヶ年度目では、マルチナロービーム音響測深機による3次元立体海底地形計測が順調に推移し、本プロジェクトで計画していた範囲の計測を終えることができた。探査海域は、千葉県外房沖の外洋であり、海況は、夏期であれば遠くフィリピンで発生した台風の影響も受ける。海洋環境に制限があるなかで、2回の探査で高精度の地形図が作成できたのは成果といえる。沖合い6kmの真潮根岩礁付近がサンフランシスコ号座礁海域との想定を行い、特に岩礁周囲の海底地形計測を重視した。 年度後半には、サンフランシスコ号に由来する鉄製品が海底に残こることで発生する地磁気の乱れを検出するための磁気探査を真潮根岩礁でおこなった。磁気探査では、自然地形に由来する磁気異常も検出される。特に、岩礁地帯など高低差があり、複雑な地形をしている海底面では、こうした磁気異常が検出され易い。高精度のマルチビームソナー海底地形データと海洋磁気探査データとをGISプログラム上で検証しながら、確実に人工物に由来すると考えられる磁気異常を数地点検出できた。 磁気異常が確認された真潮根で水深40m弱の海底で、潜水調査を実施した。潜水調査では、当該海底の地質や環境を目視確認できたほか、いくつかの人工物が確認されたことで、さらに精査が必要な状況となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度探査・調査の結果を受けて、サンフランシスコ号座礁海域については、これまで指摘されてきた田尻海岸近くの海域のみでなく、真潮根岩礁付近を想定する必要がある。 磁気異常反応が検出されたのは、真潮根岩礁周囲の深場の海底で、水深は35-46mとなる。潜水調査の環境としては、海流と水深の問題で、かなりの制約が想定される。水中ロボット(ROV)の利用を計画し、潜水調査の実施にあたっては高(深)深度での効果的且つ安全性を確保した水中調査の在り方を検討する必要がある。40m以上の深度での水中遺跡調査の事例は国内では限られている。混合ガスを使用しながら、2018年度は少なくとも2回の潜水調査の実施を計画することになる。最終年度であり、これによりサンフランシスコ号の座礁及び関連遺物の特定可能性に、一定の知見を与えることができると考えられる。 フィリピン国立博物館所蔵フィリピン・マニラ湾沖で発掘されたサンディエゴ号関連遺物は、比較考古資料として重要である。探査・調査において同博物館と協力しながら、マニラ・アカプルコ交易のガレオン船の建造について、同地の考古・文献資料のより詳細な調査も必要となる。
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