2017 Fiscal Year Annual Research Report
経済実験と非侵襲脳活動イメージングによる言語が社会効用に与える影響の解明
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16H05951
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
山田 克宣 近畿大学, 経済学部, 准教授 (80533603)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 社会効用 / 言語 / 経済実験 / fMRI |
Outline of Annual Research Achievements |
使用言語の文法構造が社会効用に影響を与えるという仮説に基づきfMRI実験を行った。実験はATR脳情報通信総合研究所で行われ、合計20人の神経活動データを採取した。本研究はNang Yang Tech UniversityのHe助教授、Riyanto准教授、ATRの田中沙織室長、東北大学の鈴木真介助教授との共同研究として進められており、現在行動データの解析が完了したところである。今後は引き続き神経活動データの解析を行い、平成30年度中の論文化を目指している。
また、関連した研究課題として、社会効用の性差、特に、比較相手の性別の違いによって異なる社会効用効果が、どの様な神経基盤を通して発現しているかという点についても探索した。結果として、線条体や尾状核といった報酬系としてしられる脳部位に男女間で有意な活動差が認められることが判明し、現在は先行研究と照らし合わせながらその生理的な含意を考察しているところである。これはATRの田中沙織室長との共同研究となっている。最後に、平成28年度から行っているインターネット上で行った同じ目的のランダム化比較実験の結果については、国際学会、国内の学会やワークショップで報告を行い、現在改訂作業を進めている。RCTで行った実験により、「わたし」という第一主語を省略しない話法で独裁者ゲームの意思決定問題を与えると、そうでないケース(わたしを省略するケース)と比較して、より利他的な判断を下すということが分かっている。こちらは平成30年度中の論文掲載を目標に作業を進めている。
これまでの活動を通して、平成29年度においては2報の社会効用に関する論文を国際査読付き雑誌に出版し、1報を国際査読つき学会で報告することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の遂行において最も困難が予想されたのはfMRI実験でのデータ取得、もしくはその準備段階として実験プログラムの実装であった。幸い、実験プログラムの開発がスムーズに完了し、微調整も十分な準備期間をもって行えたことから、高額なfMRI実験費用を効率的に消化することができ、予定していた20人からのデータ取得を滞りなく完了することができた。
行動実験の結果は言語構造と社会効用の発現の間に相関があることを頑健に主張しており、今後の神経活動データの解析で、その神経基盤を明らかにすることを最終的な目標としている。
さらに、言語と社会効用に関する付随的な研究テーマも着想したので、その様な新しいテーマにも取りかかる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は引き続き社会効用の経済実験とfMRI実験を行う。
社会効用の行動実験を新たに行う。社会効用についての実証分析の結果は蓄積してきているものの、その起源についてはまだ論争があり、未解決である。具体的には、社会効用が「自分自身の知覚」からうまれるものなのか、それとも「他者から与えられるイメージ」なのかという点を取り上げる。「自分自身の知覚」すなわちself esteemと、「他者から与えられるイメージ」すなわちsocial imageの効果を識別する行動実験を設定し、実験を行う。実験の協力者はUCLAのRicardo Perez-Truglia助教授であり、本トピックの世界的な先駆者である。Perez-Trugliaを日本に招聘しつつインターネット実験を行い、この未解決の課題に回答を与え、また政策的な含意を引き出すつもりである。
fMRI実験については29年度中に合計20名からの脳活動データを取得することができた。まずはこのデータを解析することで、使用言語と社会効用の関係の神経基盤を検証する。本年度はその結果を基に、生理学研究所で追加実験を行う予定である。29年度に取得したデータと合わせて40人分のデータを解析し、結果を纏めて論文化を目指す。
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