2018 Fiscal Year Annual Research Report
経済実験と非侵襲脳活動イメージングによる言語が社会効用に与える影響の解明
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16H05951
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
山田 克宣 近畿大学, 経済学部, 准教授 (80533603)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 社会効用 / 言語 / 経済実験 / fMRI / social esteem / self image |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績としては以下の3点がある。1点目として、言語が社会効用に与える影響の神経基盤を探るfMRI実験のデータを解析した。その結果、被験者内デザインの実験からはpro-dropの有意な効果を識別することができないということが判明した。このネガティブな結果は、それそのものがひとつの結果であり、今後論文化を行う。
2点目として、社会効用の離散選択実験のデータを効用関数の特定化に利用した理論研究を、改定を重ねた上でAustralian Economic Papers誌に出版することができた。社会効用を特徴付ける効用関数の関数形は実験データによると比よりも差分で定義されるべきであり、それが正しいとすると経済成長の中で不況が発生しえるということを主張した。これは現在の長期不況を分析する上で、有用な分析プラットフォームとなりえる。
3点目として、上の2点の研究を各所で報告する中で得たフィードバックに基づき、新しい行動実験の着想を得た。社会効用をという研究テーマにあって、その起源についての重要な論争があり、それはいまだに解決されていない。具体的には、社会効用が自分自身の知覚、すなわちself-esteemと、他者から生まれるイメージ、すなわちsocial imageの2つの効果のうち、どちらがより重要なのかという疑問についての論争である。この未解決問題にあたっては自分が開発、実践してきた離散選択実験による解決が可能であることを着想した。本研究課題については共同研究者とのコミュニケーションや実験パラダイムの実装に時間を要し、来年度以降の課題とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
以前から取り組んでいる、言語が社会効用に与える影響の行動データ分析について、本年度は国際査読雑誌に出版することができなかった。国際学会レベルでは好意的な評価を得ており、雑誌での出版につなげたい。
新しく着想した社会効用の起源を探る行動実験について共同研究者とのコミュニケーションや実験パラダイムの実装に時間を要し、来年度以降の課題とした。実験パラメター設定や被験者のリクルートなど解決しなければならない課題が多く、研究資金を無駄にしないためにも慎重に実験を行いたく、課題の延長申請を行い、結果受理された。
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Strategy for Future Research Activity |
以前から取り組んでいる、言語が社会効用に与える影響の行動データ分析について、国際査読雑誌での出版を目指す。
新しく着想した社会効用の起源を探る行動実験については、文化の差が社会効用の発現に差を与える可能性を考慮し、アメリカ、イギリス、南アフリカ、オーストラリア、シンガポールという異なる社会背景をもった5ヶ国で予備的な実験を行う予定である。資金の節約のため実験パラダイムはQualtricsを用いて自ら行う予定で、被験者のリクルートを調査会社に外注する予定である。
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