2018 Fiscal Year Annual Research Report
広帯域電波観測による銀河の3次元構造の解明と宇宙論的磁場の検出
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16H05999
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
高橋 慶太郎 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 准教授 (80547547)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 宇宙磁場 / ファラデートモグラフィ / 電波天文学 / 宇宙再電離 / 21cm線 |
Outline of Annual Research Achievements |
銀河の3次元構造を探り、銀河磁場の起源やダイナモ機構などについての知見を得るためのファラデートモグラフィに関する研究を行った。まず、実際の観測においてどのような周波数帯域で観測をすれば最も効率良く情報を得られるか、人工電波などの影響を考慮しながらシミュレーションし、ファラデートモグラフィ観測の最適な周波数帯域を得た。またファラデートモグラフィの1つの手法であるQU-fittingについて、それが様々な天体に対してどの程度の正確さで情報を引き出すことができるのかをシミュレーションした。さらに電波望遠鏡LOFARの巨大電波銀河の観測で得られたファラデー回転度を使って、宇宙大規模構造のフィラメントに存在する磁場を探る研究を行い、フィラメントに付随する微弱な磁場の存在が示唆された。
また、宇宙再電離期の中性水素21cm線の観測に向けた準備研究を行った。特に、ライマンアルファ銀河やマイクロ波宇宙背景放射と21cm線との相互相関により、前景放射の影響を軽減してシグナルを検出しやすくする手法を開拓した。前者については数値シミュレーションのデータを使って観測誤差の評価や前景放射の影響を調べ、現行の電波望遠鏡MWAや将来計画であるSKAでの観測可能性を議論した。また、後者についてはMWAとPlanckの実際の観測データを用いて相互相関に上限を与えた。また、EDGESのグローバルシグナルの観測データを使った原始揺らぎのパワースペクトルへの制限を評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
電波望遠鏡LOFARやMWAの観測データが想定より早く得られたため、それを使った宇宙磁場研究や宇宙再電離研究をすることができた。前者ではフィラメントに付随した磁場の存在が示唆された。後者では宇宙再電離21cm線とマイクロ波宇宙背景放射の相互相関への上限が得られた。このように、シミュレーションではなく実際の観測データを用いた研究が進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度に引き続き、ファラデートモグラフィの研究を行う。これまで用いてきたスタンダードな手法に、スパースモデリングのような先進的な解析手法を取り入れ、より正確で効率的なファラデートモグラフィソフトウェアを開発する。そしてそれをLOFARやMWAの観測データに適用して実際にファラデートモグラフィを行う。それとともに得られたファラデースペクトルから天体についてどのような物理的情報が得られるかを議論し、グローバルな磁場や乱流、宇宙線電子の分布などを探る手法を提案する。これらの研究のために大学院生をオーストラリアのCSIROやオランダのラドバウド大学などに派遣し、現地の解析チームと共同研究を進める。
宇宙再電離21cm線に関しても引き続きMWAとの共同研究を進める。そのために大学院生をメルボルン大学に派遣して観測データの取得やデータ解析の習得を図るとともに、相互相関解析のためのソフトウェアを開発する。MWA phase 2データとすばるHSCのライマンアルファ銀河サーベイのデータを用いて、それらの相互相関を解析し、上限をつけることを目標とする。また、MWAデータの自己相関についてはパワースペクトルだけでなくバイスペクトルや1点関数など、多様な統計量についての解析を行う。
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