2016 Fiscal Year Annual Research Report
半金属的フェルミ面を持つワイル半金属の電子状態解明
Project/Area Number |
16H06012
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
幸坂 祐生 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 上級研究員 (80455344)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 走査トンネル顕微鏡 / Weyl半金属 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、半金属的Fermiを持ち、Weyl粒子と従来電子が共存する新しいタイプのWeyl半金属の電子状態を解明する。具体的には、走査トンネル分光イメージング測定を用いて、β-MoTe2が新たなワイル半金属であることを実証する。さらに、ドーピングによる極性構造・キャリア濃度の変化や磁場効果に着目した系統的な測定を行い、Weyl粒子・従来電子複合系の電子状態の特徴を明らかにする。 本年度は、(ドーピングされていない)β-MoTe2の測定を行った。平坦なへき開面が得られ、原子分解能が得られることが走査トンネル顕微鏡(STM)像の測定から判明した。さらに、微分コンダクタンス像には準粒子干渉パターンが明瞭に観測された。複数の試料についての測定を繰り返した結果、STM像で観察される不純物の形状の特徴、トンネルスペクトル、および準粒子干渉パターンの特徴はそれぞれ2種類に分類されることが判明した。β-MoTe2は極性構造を持つ物質であり、結晶学的に異なる2種類の表面が存在する。2種類の異なる測定結果は、分光イメージング測定で種類の異なる表面が区別できることを意味している。2種類の表面の両方において、微分コンダクタンス像は極めて複雑な構造を示す。特にFermi準位よりもエネルギーが高い非占有状態側でFourier変換像には多数の構造が観測された。これはβ-MoTe2がトポロジカル表面状態、従来型の表面状態、および半金属的バルク状態からなる複雑な電子状態を持つことを反映していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
原子分解能でのSTM像が得られること、また、明瞭な準粒子干渉パターンが得られることを確認したことで、今後のより詳細な測定・解析が可能となったため。
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Strategy for Future Research Activity |
観測された準粒子干渉パターンは極めて複雑であったため、これまでの解析手法だけではその特徴を明らかにするのは難しいことが予想される。そこで、第一原理計算の結果を元にして準粒子干渉パターンのシミュレーションを行うことにより、実験結果の解析を行う。また、その結果を元にして、再びβ-MoTe2の測定を行いこの物質の電子状態を明らかにする。
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