2017 Fiscal Year Annual Research Report
エアロゾル合成による多孔性配位高分子の形態制御-ナノ材料との複合と薄膜作製-
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16H06128
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
久保 優 広島大学, 工学研究科, 助教 (00633752)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Metal-organic framework / 機能性ナノ粒子 / 薄膜 / 複合材料 / 色素吸着 / HKUST-1 / UiO-66 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では噴霧乾燥を利用した多孔性配位高分子 (MOF) のエアロゾル合成プロセス (ASP) を機能性ナノ材料複合MOFの合成およびMOF薄膜作製の2つの形態制御プロセスへと発展させることを目的としている。平成29年度では複数種類の機能性ナノ材料を複合したMOFの合成・特性評価とASPによるMOF薄膜の作製およびその形成メカニズムの解明を目的とした。 機能性ナノ材料複合MOFの合成では機能性ナノ粒子としてFe3O4ナノ粒子に加えTiO2ナノ粒子を、MOFにはHKUST-1 (Cu3(BTC)2; BTC3- = 1,3,5-benzenetri- carboxylate)を用い検討した。10~30 nmのFe3O4ナノ粒子およびTiO2ナノ粒子をHKUST-1の前駆体溶液に加え、ASPによって粒子生成を行った。ASPを行うことで、HKUST-1の多孔質特性を維持したまま、機能性ナノ粒子を任意の割合で複合することに成功した。得られた機能性ナノ粒子複合HKUST-1は液相中での短時間での色素吸着を達成し、さらに細孔内に吸着された色素はTiO2ナノ粒子の光触媒作用により分解された。色素吸着・分解後、磁性を持つFe3O4ナノ粒子複合により磁石により容易に液中から分離できることを示した。 昨年度制作したホットプレート・送液ポンプ・液滴発生器から構成されるMOF薄膜作製装置を用いてHKUST-1の薄膜形成を行った。操作条件として基板加熱温度、送液速度、ガス供給流量を変更してHKUST-1薄膜が形成される条件を明らかにした。また供給液量を変化させ、基板上で薄膜が形成される過程を検討した。その結果、噴霧初期に付着した液滴から形成されたナノ粒子上に、さらなる液滴が付着することで、初期ナノ粒子が核となり薄膜が形成されていくことを明らかにした。 またHKUST-1以外のMOFとしてUiO-66(Zr6O4(OH)4(BDC)12; BDC2- = 1,4-benzenedicarboxylate)のASPによる連続合成を行った。UiO-66は合成できたが、非常に収率・純度が低く、今後合成条件の最適化が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は複数種類の機能性ナノ材料を複合したMOFの合成・特性評価とASPによるMOF薄膜の作製およびその形成メカニズムの解明を目的としたが、どちらも計画通り進んでいる。複数の機能性ナノ粒子を内包した複合HKUST-1の合成実験においては、ASPを用いることでナノ粒子を任意の割合でHKUST-1中に複合させることができた。この複合HKUST-1を用いることで色素を吸着し、TiO2ナノ粒子の光触媒作用により分解を促進すること、さらに磁石を用いた回収が容易であることを明らかにした。今後は複合MOFの吸着・触媒などの応用の際にMOF中のナノ粒子の分布がどのように影響するかを検討する必要がある。 MOF薄膜の作製においては、基板上で薄膜が形成される過程を検討する際に操作条件、特に基板温度が得られるMOF薄膜の形態に大きく影響を与えることがわかった。基板温度が低いと付着液膜からの溶媒蒸発が遅く結晶形成・成長が緩やかに進むため、大きな粒子から構成された薄膜が得られた。一方基板温度が高いと結晶形成・成長が速やかに進むため、小さな粒子から構成された薄膜が得られた。しかし、得られた薄膜は微粒子で構成されているため、強度が低く、応用するためには強度の向上が求められ、今後検討する必要がある。 一方、ASPによる他の種類のMOFの合成にも着手しており、UiO-66と呼ばれるMOFのASPによる合成に成功しているが、低い収率・純度の課題を解決する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度では二種類のナノ粒子(Fe3O4、TiO2ナノ粒子)を用いて複合MOFを合成した。その結果、光触媒特性と磁性を併せ持つ多孔質材料が合成できた。今後は、他のMOFあるやナノ材料を用いた複合MOFの合成を行い、吸着や触媒などの特性評価を行い、複合化による新たな応用について検討する。 またMOF薄膜作製においては、ASPによりMOF薄膜が得られたが強度の向上が必要である。そこでアスペクト比の高いカーボンナノファイバーやナノチューブを複合させることによって粒子間でネットワークを形成させ、強度の向上を試みる。また導電性を付与する分子を複合させることによって、導電性MOF薄膜の形成を試みる。
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