2016 Fiscal Year Annual Research Report
Improvement of Somatic Cell Nuclear Transfer technology by Epigenome-editing
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16H06146
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
的場 章悟 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソースセンター, 専任研究員 (20585202)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 体細胞核移植 / クローン / 初期化 / エピゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
体細胞核移植法では体細胞核を卵子内に注入することでエピゲノムを初期化し、クローン個体を作ることができるが、こうして作られたクローン胚の発生効率は非常に低く未完成の技術である。これまでの申請者らの研究から、クローン胚の着床前の発生異常は、ドナー体細胞に存在するH3K9me3が主たる原因であることを明らかにしている(Matoba et al., 2014; Chung et al., 2015)。さらに、着床後の発生異常の原因のひとつがXist 遺伝子の過剰発現であることを示している(Inoue et al., 2010; Matoba et al., 2011)。以上の二つの初期化異常については、それぞれヒストン脱メチル化酵素(Kdm4)とXistノックアウト体細胞をドナーとして使うことで補正できる。そこで、まずはこの2つの異常を同時に補正した場合にクローン胚の発生効率がどの程度回復するかを判定した。卵丘細胞、セルトリ細胞の2種類のドナー体細胞を用いて実験を行った結果、野生型細胞をドナーとして使用すると、Kdm4dの注入によって7-8%程度の率でクローン産仔が得られるのに対し、Xistノックアウト体細胞を使用した場合、Kdm4dとの併用によって産仔率が15-20%程度にまで上昇することが明らかになった。しかし、この率は通常の受精胚の高い効率(50-80%程度)と比較するとまだかなり低い。さらに、胎盤の過形成というクローン胚特有の異常も、全てのクローン胚で認められた。以上の結果から、この2つの同時補正によっても着床後にみられるクローン胚特有の異常な表現型はレスキューされないことが明らかになった。これは即ち、クローン胚において未同定の初期化異常が存在することを強く示唆している。今後の研究ではエピゲノム解析によって、この初期化異常の詳細を明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、計画していた通り、28年度中にKdm4dとXistノックアウトの組み合わせによるクローン胚の発生改善程度を明らかにすることができた。その結果、H3K9me3除去とXist ノックアウト細胞の併用によって作ったクローン胚では、着床直前までは受精胚と同様に発生するものの、着床直後から異常な表現型を示すことから、着床前の胚盤胞期には既にその後の発生異常の原因となるエピゲノム異常が存在することが強く示唆された。 28年度から29年度にかけては、上記のようにして作製した胚盤胞期クローン胚のトランスクリプトームおよびエピゲノムを受精胚のそれらと比較解析し、初期化異常が起きているゲノム領域を同定する予定である。トランスクリプトーム解析については、予定通り所属研究室において単一胚からのRNA-seq解析系の立ち上げを完了した。また、エピゲノムの統合的解析については、中国浙江大学のLi Shen教授、米国ハーバード大学のYi Zhang教授などの共同研究者と既にサンプルの受け渡し、及びデータ解析を開始しており、計画通りに順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度は、まず上記のようにKdm4dおよびXistノックアウトを併用して最適化した胚盤胞期クローン胚を用いてトランスクリプトームおよびエピゲノム解析を行い、受精胚のそれらと比較解析することで、初期化異常が起きているゲノム領域を同定する。エピゲノム解析についてはまずは微小スケールでも実行可能なWhole genome bisulfite sequence(WGBS)法によってゲノムワイドなDNAのメチル化を解析する予定である。これについては既に共同研究者にサンプルは渡しており、現在データの解析中である。ヒストン修飾を解析するChIP-seqは、初期胚のような微小スケールのサンプルでは非常に難しい技術ではあるが、最新の手法では1000細胞レベルからも可能であるとの報告もあるので、それらを取り入れて解析することも検討する。次に、ドナーの体細胞でもエピゲノム解析を行い、初期化前の段階では初期化異常領域にどのようなエピゲノム修飾が存在したか解析する。体細胞のエピゲノム情報については、ENCODE projectなどパブリックなデータベースとして入手可能なものもあるので適宜活用する。 以上のような体細胞の解析を複数のエピゲノム修飾に対して行い、これらの情報を統合することによって、核移植前の体細胞核が核移植後のクローン胚核にいたるまでの初期化過程において、どのようなエピゲノム変化が起きるのか、そしてその変化のうちどれが受精胚と比べて異常になるのか、さらには、その初期化異常の原因は体細胞核にどのような修飾として存在しているのか、を明らかにする予定である。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] CRISPR/Cas9-mediated genome editing in wild-derived mice: generation of tamed wild-derived strains by mutation of the a (nonagouti) gene.2017
Author(s)
Hirose M, Hasegawa A, Mochida K, Matoba S, Hatanaka Y, Inoue K, Goto T, Kaneda H, Yamada I, Furuse T, Abe K, Uenoyama Y, Tsukamura H, Wakana S, Honda A, Ogura A.
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 7
Pages: 42476
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Mouse D1Pas1, a DEAD-box RNA helicase, is required for the completion of first meiotic prophase in male germ cells.2016
Author(s)
Inoue H, Ogonuki N, Hirose M, Hatanaka Y, Matoba S, Chuma S, Kobayashi K, Wakana S, Noguchi J, Inoue K, Tanemura K, Ogura A.
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Journal Title
Biochemical and Biophysical Research Communications
Volume: 478
Pages: 592-598
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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