2016 Fiscal Year Annual Research Report
リボソームに翻訳履歴を付加してmRNA配列非依存的な翻訳制御機構を検証する
Project/Area Number |
16H06152
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠藤 慧 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教 (40626074)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 翻訳 / mRNA / リボソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、本研究課題で技術確立を目指している「リボソームに翻訳履歴を付加する方法」の開発に取り組んだ。特に、技術開発を円滑かつ効率よくすすめるため、研究の初期段階で集中的に遺伝子材料を集め、今後の研究開発での再利用性が高まるように規格化した一連のプラスミドベクターシリーズを構築した。収集した遺伝子材料をもとに履歴が付加されるリボソームと履歴を付加するmRNAをそれぞれ設計し、今後の研究材料を構築するとともに、構築した材料の評価に取り組んだ。 履歴が付加されるリボソームについては、酵母のリボソームタンパク質から、立体構造モデルにもとづいてリボソーム外部に末端を有するものを探索し3つの候補タンパク質を得た。これらの末端に修飾酵素の基質ペプチドを付加し、酵母ゲノム中の遺伝子と置き換えた。同時に、基質ペプチドの代わりにエピトープタグを付加した酵母株も構築し、対象実験として用いることとした。これらの酵母株について、タンパク質を抽出し、リボソームタンパク質に付与されたタグ配列の修飾状態を確認している。 リボソームタンパク質に翻訳履歴を付加するためのmRNAについては、修飾酵素をコードする様々なmRNAを設計して発現ベクターを構築した。特に、出芽酵母内で選択的スプライシングを再構築するための遺伝子材料を探索し、比較的近縁の酵母に由来する遺伝子の一部を合成した。この遺伝子の一部を修飾酵素と置き換えて、選択的スプライシングにより酵素活性の有無が変化する遺伝子スイッチを設計した。このスイッチを酵母細胞の発現ベクターに挿入し、発現したmRNAをリアルタイムPCR法を用いて確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の遂行に必要 な遺伝子材料の収集と規格化は順調に進行し、研究の進行に十分な段階に到達している。これらの材料をもとに構築した酵母株や発現ベクターの評価については評価系の確立も含めて、まだ十分な検証には至っていない。特に、本年度に新たに導入したリアルタイムPCRによる評価は、構築した発現ベクターの配列の特殊性のため当初予期していた以上に困難で、十分な精度と効率で評価する実験系の構築が遅れている。一方、次世代シーケンシング技術との融合については先行してパイロット実験が進行している。
これらの点を総合的に見て、本研究課題はおおむね順調に進展している、と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、リアルタイムPCRを用いた実験系を中心に、構築した実験材料の評価系を確立することを急ぐ。ついで、次年度に新たに導入予定の蛍光顕微鏡を用いた経時追跡による評価系の確立に取り組む。当初の計画通り新規開発技術の評価を入念に行う。また、先行して実施している次世代シーケンシング解析の結果を取り入れ、効率的な技術開発研究を実施する。
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