2017 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of the mechanism that regulates centrosome-dependent migration of the nucleus
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16H06169
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
高鳥 直士 首都大学東京, 理工学研究科, 研究員 (70404960)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 胚発生 / 細胞極性 / mRNA局在 / 核移動 / コンパクション |
Outline of Annual Research Achievements |
胚葉形成は,動物の発生の初期に起こる重要過程である.中胚葉と内胚葉は中内胚葉細胞から作られることが近年の細胞系譜の解析からわかってきた.しかし,中内胚葉細胞の子孫細胞のうち,どれが中胚葉になり,どれが内胚葉になるのか決めている機構の詳細は,ほとんどの動物で不明である.私たちは脊索動物のホヤを材料に,中内胚葉細胞の娘細胞の一方が中胚葉,もう一方が内胚葉になる仕組みを調べている.中・内胚葉運命が異なる細胞に分離されるには,(1)中内胚葉細胞の核が,将来中胚葉細胞を作る側に移動すること,(2)移動によりNot転写因子をコードするmRNAが中内胚葉細胞の,将来中胚葉になる側に,局在すること,(3)分裂装置の移動の際に,Not mRNAの局在がWnt遺伝子依存的に維持され, Not mRNAが中胚葉細胞に分配されることが重要であることがわかった.核を移動させる機構を解析するために,細胞内における細胞の形態と,核の位置を等方的に,正確に記載することが前提となる.2017年度はこの課題に取り組み,Piezo素子を用いたZ-stack画像の取得方法を導入し,マウント剤と蛍光色素の組み合わせを吟味した.これにより胚の奥深い領域についても歪みの少ない明るい画像が取得できるようになった.以上の他にも様々な,顕微鏡観察に関わる諸問題を解決して,等方的に細胞の形態と核の位置とを観察することが可能になった.これらの改良の結果,核移動に伴い,中内胚葉細胞の形態が変化し,核の中胚葉側への移動に貢献していることが示唆された.中内胚葉細胞の形態変化は,細胞のコンパクションと脱コンパクションであることが示され,さらに脱コンパクションがNot mRNAの非対称分配に重要であることが示唆された.現在は脱コンパクション時の細胞形態の変化の原動力を解析している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度までは,核と中心体から細胞表層に伸びる微小管に注目して研究を進めてきたが,それ以外の要素については,研究する方法のめどが立っていなかった.昨年度,顕微鏡観察方法の改良を進めた結果,核と中心体の位置ならびに細胞形態の時間変化を高い精度で記載する方法を確立することができた.この結果,運命分離に必須のmRNAの非対称分配に重要なのは,隣接する細胞間の細胞周期の長さの違いによってもたらされる細胞表層の張力の違いに由来する細胞変形(ならびに変形によってもたらされる核位置の相対的な変化)であることがわかってきた.今回見出した細胞運命分離機構は,従来の研究手法や材料では見出されにくいと想像される,興味深いものであり,また,いくつもの新しい細胞運命分離に関する重要な問いを生み出した.前年までの研究計画は,重要であるものの,以後の研究の広がりが限定されていた.重要な研究成果が得られ,新たな展開が生まれたことで,昨年の研究の進捗状況は計画より良かった,と判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
隣接細胞間の細胞周期の長さが異なるのは,胚葉運命分離が起こる第5周期に特異的な現象であり,これをもたらす機構を明らかにする.また,細胞変形に伴う細胞膜面積の増減を制御する機構を解析する.中心体の挙動を制御する機構を解明し,一昨年度までにNot mRNAの非対称分配に重要であることを明らかにしたPI3Kシグナル伝達経路との関係を解析する.
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