2018 Fiscal Year Annual Research Report
新しい沿岸複合生態系像の構築に向けた海底湧水研究の広域展開
Project/Area Number |
16H06200
|
Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
杉本 亮 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 准教授 (00533316)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 海底湧水 / 生物生産 / 食物網 / 放射性同位体 / 安定同位体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は以下の研究を実施した。 1)気仙沼湾の支湾である舞根湾において海底湧水が植物プランクトン動態に及ぼす影響に関して観測を6月、9月、11月に実施した。舞根湾の植物プランクトン動態(種組成・一次生生産速度・現存量)は、海洋環境の変動に加え、栄養塩供給源の寄与割合の変化に大きく影響を受けていた。特に、溶存態無機リン(DIP)を豊富に含む再循環性地下水の影響が大きいと、珪藻類が増殖可能な栄養塩環境(※リン制限が緩和)となり、全体の一次生産速度が増加することが示された。一方、DIPが少ない河川水や淡水性地下水が多く流出する時には、クリプト藻類が多く出現することが確認された。 2)河川水の流入がない砂浜域(若狭湾内の和田浜)における食物網構造に海底湧水が及ぼす影響を5月、7月、9月に調べた。ラドンおよびラジウム同位体をトレーサとすることで、栄養塩を豊富に含む地下水が汀線付近で湧出し、沿岸域へ地下水由来の栄養塩類を供給していることが明らかになった。一方、安定同位体比解析に基づく食物網評価により、地下水由来の栄養塩を利用して生産したと想定される一次生産者(底生微細藻類と植物プランクトン)が、主に表在性のアミ(Nipponomysis. sp)を介して魚類(主に稚魚)へエネルギー転送が行われていることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海底湧水と生物生産の関係に関する調査は十分な調査を行うことができ、豊富なデータが蓄積されてきている。曳航型電気探査機器を用いた調査に関しては、調査は実施したものの、機器の故障もありデータが得られなかった。次年度に機器の修繕を行い、再度の調査を予定している。
|
Strategy for Future Research Activity |
海底湧水と沿岸域の生物生産の関係に関するデータは多くの沿岸域で蓄積されてきた。次年度は、それらの統合評価を中心に実施する。また、電気探査機器の修繕が済み次第、小浜湾を対象に電気探査機器調査を再び実施し、海底湧水域の絞り込み作業を行う。
|