2019 Fiscal Year Annual Research Report
Dynamic conformation and domain structure of lipid molecules in model biomembranes
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16H06315
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村田 道雄 大阪大学, 理学研究科, 教授 (40183652)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
花島 慎弥 大阪大学, 理学研究科, 講師 (50373353)
篠田 渉 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (70357193)
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Project Period (FY) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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Keywords | 脂質二重膜 / 動的配座 / スフィンゴミエリン / 脂質ラフト / ドメイン構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
ラフト系における脂質分子の分子間相互作用に関する情報を取得するために、モデル脂質二重膜を用いて代表的ラフト脂質であるスフィンゴミエリン(SM)とコレステロール(Cho)で形成されたナノドメインの性質を調べるために、種々の実験を行った。 まず、蛍光標識SMの天然体と鏡像異性体をそれぞれ合成し、その混合膜を蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)効率を調べることにより、ラフトモデル膜に形成されるSMナノドメインのサイズが5~10ナノメートルであると推定することに成功した(投稿中)。より生体膜に近いモデル膜における相状態を調べるために、外葉がSM、内葉が不飽和リン脂質で構成された非対称膜を調整した。この膜からなるリポソームについて、固体NMRによって外葉と内葉のChoの分配比を推定した。その結果、Choの揺らぎを示すパラメータはラフト相に近いものであったので、このようなモデル膜においてChoが外葉に多く分配している可能性が高い。すなわち、この結果は生体膜においてもChoがある程度外葉に存在する要因として、ドメイン形成が挙げられることを示唆している。 昨年に引き続き、2Hと13Cで標識したSMを化学合成し、ラフト形成中のSMの重要な構造的特徴であるアシル鎖の構造と配向を分析するために、固体NMR(REDOR法)に供した。その結果、アルキル鎖のコンフォメーションを選択的に観察することに成功し、SMのアシル鎖の中心付近にコレステロール(Cho)を含む脂質ラフト型二分子膜の結合は約90%以上のアンチ形コンフォメーションを有し、この部分のゆらぎが低いことが明らかとなった(投稿準備中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究を開始して4年が経過したが、計画した実験はほぼ完了し、十分な成果が得られたと考えている。まだ論文化しなければならい成果が少しあるが、計画した実験ほぼやり終えたので、非対称膜の実験など新たな方向に展開している。 また、当初の研究計画書に記載されていなかった実験方法を試みたところ、意外に良い結果が得られました。また、昨年度の古細菌膜に続いて、メチル分岐炭化水素鎖を有する脂質二重膜の研究として、生理実験などに重用されている人工脂質であるdiphytanoylphospatidylcholine(DPhPC)について解析を行った。その結果、単純なアシル鎖で想定されていた膜表面に垂直な平均配向とは異なり、DPhPCは特定の角度で傾いた平均配向を取ることを明らかにした。このように、この基礎研究は順調に進んでおり、締め切り前に目標を達成できると信じています。また、上記の当初の想定を超えた成果も出ており、これらの成果を踏まえた新たな研究展開を準備している。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、大部分の研究課題は当初計画より早く進捗しており、新たな展開にすでに進んでいると考える。実験設備や技術、現在の人材のポテンシャルを最大限活かすためには、次の研究課題を本格的に開始することが最善策であると考え、現在、基盤Sの研究計画最終年度前年度応募を行っている。 新しい展開とは、主に非対称膜を用いた実験に切り替えることである。非対称膜ついては、顕微鏡観察や蛍光実験など比較的少量で実施できる実験が限定的に行われているにすぎず、固体NMRを含めた十ミリグラムスケール試料量と数日間の長い測定時間を必要とする実験は手付かずである。これは、単に既存の実験法をスケールアップすれば解決する問題ではなく、上述のように長時間安定な非対称膜の作製など根本的に解決すべき問題が山積する。これらの点の解決を目指して、上述のようにすでに非対称膜について予備的実験を開始しており、良好な結果を得ている。
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Research Products
(22 results)