2017 Fiscal Year Annual Research Report
Service Sector Productivity in Japan: Determinants and Policies
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16H06322
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
深尾 京司 一橋大学, 経済研究所, 教授 (30173305)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮川 努 学習院大学, 経済学部, 教授 (30272777)
川口 大司 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (80346139)
阿部 修人 一橋大学, 経済研究所, 教授 (30323893)
小塩 隆士 一橋大学, 経済研究所, 教授 (50268132)
杉原 茂 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 非常勤講師 (60397685)
森川 正之 独立行政法人経済産業研究所, 副所長 (70272284)
乾 友彦 学習院大学, 国際社会科学部, 教授 (10328669)
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Project Period (FY) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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Keywords | サービス産業 / サービス消費 / サービス統計 / 教育・医療の経済学 / 生産性 |
Outline of Annual Research Achievements |
詳細に産業別の労働生産性や全要素生産性の動向を分析することができる日本産業生産性(JIP)データベースについて,日本のGDP統計の2008SNAに基づく基準改定に対応した全面改定作業を日本のDP統計を作成している内閣府経済社会総合研究所(ESRI)国民経済計算部と経済産業研究所(RIETI)の協力を得て進めた.2015年までをカバーするJIPデータベース2018は,2018年夏に完成する予定である.また,日本の都道府県別・産業別にサービス産業の労働生産性・全要素生産性を計測できる都道府県産業生産性(R-JIP)データベース2017をRIETIと共同で改定し(2012年までをカバー),公表した. さらに、日本のGDP統計におけるサービス産業の生産と価格に関するデータの問題点を国際比較の観点から分析し,改善の方向性について議論した諸論文をESRIの『経済分析』特集号として刊行した. この他,対家計サービスの品質を日米で国際比較するインターネット調査を日本生産性本部と協力して実施し,その結果をまとめ,国際会議で発表した.また中小企業庁と連携し,通常は入手困難な信用保証協会のミクロデータ(CRD)を利用し,サービス産業を中心とする中小企業の生産性動学を分析した. 研究成果を国際発信するため,生産性分析の第一人者であるDale Jorgensonハーバード大学教授やRichard Baldwinジュネーブ国際高等問題研究所教授らを招き,RIETIと共同で,国際コンファレンス・同時通訳付きシンポジウムを開催した.これにより,欧米・アジア諸国(中国,インド,韓国)等との研究ネットワークも強化した. 日本生産性本部より取得した「顧客満足度データ(2009年から2015年)」と財務データの紐づけを行い、顧客満足度と労働生産性に関する研究を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
第一に,データ収集とそれを活用した研究論文の執筆が順調に進んでいる。具体的には、JIPデータベース2018,R-JIPデータベース2017の作成,サービスの質の日米格差に関する調査,中小企業に関するCRDの利用,に加え,1、R-JIP 2018とその付帯表である都道府県間のサービス価格差情報と企業ミクロデータ等を用いた日本のサービス産業の地域構造変化,特に新しい都市型サービスの興隆による地域間格差拡大に焦点を当てた研究書の執筆,2、日本生産性本部より取得した「顧客満足度データ(2009年~15年)」と財務データを紐づけし、顧客満足度と労働生産性に関する研究,3、経済の構造変化と生活・消費に関するインターネット調査,4、当初計画していた医療マネジメントに関する調査を,内閣府と調整し内閣府公式統計(サービス産業に関するマネジメントと組織プラクティスに関するサーベイ(MOPS))に入れ込む見通しを付け,医療機関を対象に予備調査を実施,5、Time Useとサービス支出の関係を分析する独自調査の実施,6、LOSEF(「くらしと仕事に関する調査」)を用いた研究成果の公表,7、OECDの国際成人力調査(PIAAC)個票を用いた国際比較研究,8、IT投資が停滞している原因に関する分析,などを進めた. 第二に,多数の研究成果が報道機関や政府の白書等で取りあげられ,社会的にも大きなインパクトを与え始めた.具体的には、サービスの質の日米格差に関する調査研究(日経新聞),JIP/R-JIPデータベースとその研究成果が,内閣府2017年度年次経済財政報告、経産省2017年通商白書、総務省2017年情報通信白書で利用・引用され,CRDを用いた実証研究成果は、2017年度中小企業白書で広範に引用された.また、OECDの国際産業連関表作成と連携しているEUの世界産業連関表(WIO)がJIPを利用した.
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度に引き続き,詳細な産業レベルでサービス産業の生産性計測を可能にするJIPデータベースの全面改定(2008SNAに対応させ2015年までカバー)を,内閣府・経済産業研究所の協力も得て進め,年度内に公表する.サービス産業生産性に重要な無形資産投資や情報技術(IT)投入,サービスの質の国際比較結果も,産業別データを整備する.また,2017年度に公表した都道府県レベルの産業構造と生産性に関するR-JIPデータベース2017を用い,サービス産業が地域経済に与えた影響を分析する. Bounfourパリ南大学教授らと国際連携し,当初2019年度に予定していたIT利用度に関する調査(宮川他)を実施する.(今年度予定していた雇用と子育てに関するパネル調査(LOSEF)の実施(小塩他)を2019年度に延期).国際連携では,6月にハーバード大学で開催される,生産性計測に関する世界を代表する国際連携組織World KLEMS総会での成果報告(深尾、宮川他)に加え,今後の国際連携(特に,情報通信技術とサービス産業を中心とした労働の利用に関する共同研究)について欧米・東アジアの研究者と協議する. 本年度は,プロジェクト中間年として成果の取り纏めと発信を加速する.これまでの調査結果や構築したデータベースによる主な研究成果を,5本の論文(生産と消費の同時性:阿部他,労働市場:川口,無形資産:宮川他,家庭内サービス:森川,中小企業の生産性動学:深尾他)に纏め,学術誌『経済研究』特集号に掲載(2018年10月予定)する他, R-JIPデータベースを用いて分析した成果を刊行する.また,日本経済学会秋季大会(2018年9月)では,日本経済の歴史に関するパネル討論のセッションを設定し,超長期GDP推計,労働市場,土地制度を中心に,サービス産業が日本の経済発展に果たした役割について研究成果を報告する.
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Remarks |
サービスの質の日米格差に関する調査研究について、「日本のサービス「米より質高い」民間調査」『日本経済新聞』朝刊(2017年8月30日)に掲載された.
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Research Products
(38 results)