2019 Fiscal Year Annual Research Report
Service Sector Productivity in Japan: Determinants and Policies
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16H06322
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
深尾 京司 一橋大学, 経済研究所, 教授 (30173305)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮川 努 学習院大学, 経済学部, 教授 (30272777)
川口 大司 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (80346139)
阿部 修人 一橋大学, 経済研究所, 教授 (30323893)
小塩 隆士 一橋大学, 経済研究所, 教授 (50268132)
杉原 茂 日本大学, 経済学部, 教授 (60397685)
森川 正之 独立行政法人経済産業研究所, 副所長, 副所長 (70272284)
乾 友彦 学習院大学, 国際社会科学部, 教授 (10328669)
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Project Period (FY) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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Keywords | サービス産業 / サービス消費 / サービス統計 / 教育・医療の経済学 / 生産性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は,これまでに実施した独自調査や入手予定の政府統計ミクロデータ,蓄積した知見等を活用して,特に以下の研究活動に注力した. 統括・計測班:1)新しく完成させたJIPデータベースに基づき,日本におけるサービス産業の変容を分析した。具体的には,労働生産性上昇の停滞が他の諸国と比較して著しい資本蓄積の停滞で起きていること(金・権・深尾 2020),観光関連産業で生産性の高い事業所の退出が著しいこと(深尾・権・金 2019),日本における近年の労働分配率下落が,飲食店・旅館業など非熟練集約的サービス業等が主導して起きており,これが非正規雇用の増加と密接に関係していること(Fukao and Perugini , forthcoming)等を示した。2)「雇用と子育てに関するパネル調査(LOSEF)」の結果を活用して社会保障と,高齢者や女性の雇用および健康の関係を分析した(Oshio 2019等)。 労働・人的資本班:1)サービス産業における働き方と生産性の関係を人事データを用いて分析した(Sato, Kuroda and Owan 2020等)。2)教育産業のパフォーマンスについて実証分析した(Higuchi, Sasaki, and Nakamuro 2020等)。3)労働市場における不完全競争下の生産関数推計を行った。 資本蓄積班:1)JIPデータベースと整合的な形で,詳細な産業別に無形資産投入の推計を行った。2020年夏には完成見込み。2)サービス産業において人的資本蓄積やICT・無形資産投資が停滞している原因を分析した(Fukao et al. 2019)。 生産と消費の(空間的・時間的)同時性班:1)物価水準と実質支出の国際比較について研究した(Abe and Rao 2019)。2)北京師範大学等と協力して,サービスの質に関する日中米韓比較調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本におけるサービス産業の生産性について計測方法の問題点を明らかにし、また生産性停滞の原因を探るための基礎資料となるJIPデータベースを完成・更新し、国際的な連携組織であるEU KLEMSプロジェクトへ提供した。これにより2008SNAベースで日本のサービス産業の生産要素投入とTFPの動向を他の主要国と比較することが初めて可能になった。国際連携としては、EU KLEMSに加えて、OECDにおける雇用と生産性のダイナミクスの国際比較分析プロジェクトDynEmp/MultiProdに参加し、日本の政府統計ミクロデータを利用した分析を進めることにより、日本は新規開業率が低く、若い企業の割合が海外と比較して著しく低く、更に各国同様、若い企業は日本においても雇用成長の主な要因となっているが、その成長率は国際的にみて低い、等の結果を得た(池内他 2019)。 サービス産業の生産性の長期的な分析も進めた。具体的には、JIPやR-JIPを一橋大学経済研究所の長期統計(一橋推計、明治期からカバー)と接続することにより、日本の長期経済成長において人的資本の蓄積が極めて重要な役割を果たしたこと、高度成長期の資本蓄積やTFP上昇にサービス産業が重要な役割を果たしたことを示した深尾(2020)を刊行した。 なお、2019年度末には、コロナウイルス禍により、国際交流の停止、政府統計ミクロデータ利用許可の遅れ、海外からの資料取り寄せの停止、などの困難が生じた。2020年度には、ウイルス禍のため、国際会議・シンポジウムでの成果発信は難しいことが予想される。旅費を抑制する一方、ウェブページの充実やZoom会議等により、情報発信や意見交換が滞らないよう努める。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の2020年度は、実施済み調査や政府統計ミクロデータ、蓄積した知見等を活用して研究成果を取り纏める。学術論文刊行に加え、東京大学出版会より2021年初夏に報告書を出版する予定である。コロナウイルス禍のサービス産業生産性への影響も、可能な限り分析を行う。予定している主な研究活動は次のとおりである。【統括・計測班】1)JIPデータベース2018を用いて、GDP統計の問題点により生じている生産量やTFPに関する計測誤差を推計し、統計の改善策をまとめる。2)サービスの多くは輸送が困難で、地域内の需要構造が生産性を左右する。そこで政府統計を活用して通勤圏JIPデータベースを作成し、人口構成やIT普及が地域の生産性に与える効果を分析する。3)「雇用と子育てに関するパネル調査(LOSEF)」の結果を用いて分析を進める。4)マークアップや労働分配率の分析を進める。【資本蓄積班】5)日本における投資停滞の原因を探る。【生産性と消費の(空間的・時間的)同時性班】6)2019年度に行った、サービスの質に関する日中米韓比較調査を補う形で追加調査を行い、世界銀行、OECD等が進めてきた国際比較プログラム(ICP)による物価水準国際比較統計の改善策を提言する。7)通常の財と異なり、サービス消費の際には、時間や他の財の投入が必要となることが多い。この点について理論・実証分析上の諸問題を展望し、独自調査の結果を紹介する。8)これまでの調査結果を用いて、小売店のセルフレジへの評価や軽減税率と外食サービス支出の関係などを分析する。【労働・人的資本班】9)最低賃金を引き上げれば低生産性の企業から労働者が解放され、高生産性企業に労働者が転職するか否かを、諸外国と我が国の最低賃金に関する研究をレビューして明らかにする。10)日本の大学院教育がイノベーションに与える影響を分析する。
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Remarks |
宮川努 「イノベーションへの課題(中)「21世紀型」、知識の蓄積が源泉」日本経済新聞(朝刊)<経済教室>2019年12月24日.
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Research Products
(42 results)