2019 Fiscal Year Annual Research Report
Studies on Chemical Synthesis of Polyketide-Derived, Biologically Active Complex Natural Products
Project/Area Number |
16H06351
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
鈴木 啓介 東京工業大学, 理学院, 教授 (90162940)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大森 建 東京工業大学, 理学院, 准教授 (50282819)
安藤 吉勇 東京工業大学, 理学院, 助教 (40532742)
瀧川 紘 京都大学, 薬学研究科, 講師 (70550755)
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Project Period (FY) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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Keywords | ポリケチド / 二量体 / オリゴマー化 / バイブリッド化 / 天然有機化合物 / 全合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、II型ポリケチド生合成経路に由来する複雑多様な構造(高次構造)を有する生理活性物質の合成経路の開拓を目的とする。本年度においては、プルラマイシン系抗生物質の一つであるサプトマイシンHの不斉全合成に向けた検討を進め、光学活性体の合成法に道筋をつけた。すなわち、側鎖部に含まれるオキシラン環部の立体化学の制御に成功し、その側鎖を含むアグリコンの合成に成功した。一方、フラバン系ポリフェノールの合成研究においては、ジオキシ基とジチオ基をそれぞれ有するフラバン単位を用いたオルトゴナルアヌレーション法が無保護のフラバン誘導体を用いても問題なく利用できることを見出した。また、計算化学的手法により、本反応の高い位置選択性の起源が反応中に生じるカルボカチオン中間体の安定性により説明できることを明らかにできた。さらに、オリゴマー構造の構築に関し、プメラー転位とFriedel-Crafts反応のカスケードプロセスを独自に見出し、フラバン骨格の構築と活性化基の導入が一挙に可能となる新手法を見出すことができた。本反応を利用して複雑な4量体構造を有するオリゴマーの合成に成功した。また、以前より検討を進めてきたベニバナの色素成分、カルタミンの合成研究においては、昨年確立した合成経路をさらに大幅に短縮化させることに成功した。また、開発したナフトキノンの立体特異的光酸化還元反応を活用したオキサビシクロ骨格形成法の汎用性を拡げるための検討を行い、あらたな基質適用性を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究対象とする二量化構造の生理活性は、各単量体の単なる加算からは予測できない、創発的な側面がある。この視点からポリケチド由来の単量体が複雑にオリゴマー化した構造の天然物に取り組んだ結果、ピラノナフトキノン系抗生物質の一つであるナフトサイクリノン類の合成研究において、光反応を利用した独自の合成戦略の立案、実践に至った。 一方、フラバン系ポリフェノールのオリゴマーの合成においても予期以上の成果を得ている。焦点を当てたのは、報告例のない二重連結(A型)構造を複数有するオリゴマーである。実際に、以前報告したカテキン類のde novo合成法により立体選択的、かつオリゴマー化に適切な形で調製した後、これらの単量体を用い、A型構造の構築法(アヌレーション法)および反復オリゴマー化法(オルトゴナル連結法)を駆使することにより、複雑なオリゴマーを早期に合成することができた。さらに、本合成の途上、Pummerer転位反応とFriedel-Crafts反応を組み合わせたカスケードプロセスを見出し、オリゴマー構造の構築が一層簡便かつ効率的に行えるようになった。 さらに特異な二量化構造を有するベニバナの色素成分カルタミンの合成についても大きな成果が得られた。すなわち、合成の鍵となるキノカルコンC-グリコシドのモノマー単位の合成に関し、昨年確立した経路を大幅に短縮化させることに成功した。これにより、これまで合成標的としていたカルタミン以外の様々な類縁化合物の合成にも道が拓けた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果を踏まえ、今後も引き続き新規効率合成手法の開発と、それらを活かしたポリケチド系天然有機化合物、特に多量化構造をもつ化合物の全合成経路の開拓に取組む。また、合成の最終段階に近づきつつある化合物については、その精製方法や同定方法などにあらたな技術、原理を活用した多面的な構造分析法の確立を合わせて行うと同時に、合成した種々の化合物については、天然/非天然型問わず、その生理活性や物性評価を研究協力者との連携を図りながら行ってゆきたい。そして残る研究期間において、新たな生理作用や機能の発見に全力を注いで検討を進めてゆく。
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Research Products
(55 results)