2016 Fiscal Year Annual Research Report
relatedness概念に依拠した北インド・チベット系社会の親族に関する人類学
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16H06880
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中屋敷 千尋 京都大学, 人文科学研究所, 研究員 (00784498)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 親族 / 関わり合い / チベット系民族 / インド / 文化人類学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、従来のチベット系社会における親族研究で扱われてきた父系出自集団などの単なる系譜関係とは異なり、日常生活を営むなかで築かれる互助的な親族関係ニリンがどのような親族関係かを解明することを目的としている。 平成28年度は主に文献研究を集中的に行い、親族を日々の構築過程として捉える親族研究を把握、整理した。その成果として、投稿論文を執筆、提出し、受理された。 まず、チベット系社会の親族研究の一連の流れを整理した。植民地時代に英国の人々によって実施された調査に基づき執筆された地誌Gazetteerをはじめ、1950年代に多く書かれたスピティや周辺地域に関する英語文献、近年発行された基礎的文献を読解し、整理した。 次に、人類学における親族研究の流れを確認した。従来の血縁、姻戚関係を重視し、生物学的、法的側面の優位性を暗に強調してきた、出自集団論やキンドレッド論について再度整理した。それとともに、1960年代から登場してきた親族関係の戦術的側面に焦点化した研究を概観した。 その上で、特に2000年以降親族概念の変革を試みているJanet Carstenをはじめとした親族研究の文献資料を収集し、精査した。具体的には、「関わり合い(relatedness)」概念をめぐる親族研究を精査した。そして、Carstenの発想を受け継ぎ発展させた後の研究や批判的研究を精査し、他人を親族に含めて捉えることの可能性と問題点を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画以上に進展している。平成28年度は文献資料の整理と分析を行う予定だったが、それはすでに完了し、さらに投稿論文の執筆を行うこともでき、すでに受理されている。また、今年度の成果を国際学会で発表するため、申し込みを行った。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、平成29年度は文献研究を行うとともに、フィールド調査に力を入れる年にする。本研究においてもっとも重要となるのがフィールド調査である。北インド・チベット系民族の居住するスピティ渓谷において約6ヶ月間の調査を予定している。研究方法については、インタビュー形式の調査では現地の人びとから血縁や姻戚関係の重要性についての言説ばかりが集まる可能性が考えられる。これには親族は助け合うべきとする社会規範や生物学的、法的言説の影響力が関係していると考えられる。そのため基本的には参与観察を通して、対象の人々の実践を観察し、必要に応じてインタビューを行う。それと同時に人々の言説のあいだの齟齬や、言説と実践のあいだの相違についても把握する。
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