2016 Fiscal Year Annual Research Report
エネルギーハーベスティング型巨大純スピン流生成技術の開発
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16H06929
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
沖 宗一郎 大阪大学, 基礎工学研究科, 特任研究員(常勤) (40780838)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | スピントロニクス / ホイスラー合金 / スピンカロリトロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、代表者が有する低温MBE法を応用した組成制御技術を用いることにより、Si基板上に作製した種々の単結晶ホイスラー合金の組成と、熱流誘起スピン注入効果の性能指数である「スピン依存ゼーベック係数」の相関関係を見出し、スピン偏極率とスピン依存ゼーベック係数の両立が可能な材料の探索を目的とする。以下に研究実績の概要を示す。 (1)熱流誘起スピン注入効果の観測可能な横型ナノスピン素子作製プロセスの確立 先行研究において、熱流誘起スピン注入の効率は電流誘起スピン注入と比較して高々数%であるため、極低温において数百nm以下の電極距離の横型ナノスピン素子を用いることで観測が可能になっている。単結晶ホイスラー合金において、電流誘起スピン流注入の効率は先行研究の材料と同等程度~約10倍のものまで様々あるが、熱流誘起スピン注入の効率については未知数であり、先行研究と同等程度の横型ナノスピン素子の作製が材料探索・性能比較の面で重要となってくる。単結晶ホイスラー合金を用いた横型ナノスピン素子の作製には、一般的なリフトオフ法による微細素子の作製が行えないため、電子線描画とイオンミリングを用いた横型ナノスピン素子の作製プロセスを確立した。 (2)熱流誘起スピン注入効果の観測手法の確立 熱流誘起スピン注入効果の観測には、横型ナノスピン素子のスピン注入電極部分において、主に強磁性体/非磁性体接合界面に直流電流を印加する手法と、強磁性体のみに交流電流を印加し熱流注入を行う2つの手法がある。当初、直流電流による手法で熱流誘起スピン注入効果の観測を試みていたが、電流誘起スピン注入の効果が大きい材料において、熱流誘起スピン注入の効果が小さいとその観測が困難になることが判明した。そこで交流電流源とロックインアンプを用いた測定系を新たに構築し、熱流誘起スピン注入効果のみを観測可能な交流電流による手法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は単結晶ホイスラー合金のスピン偏極率とスピン依存ゼーベック係数の相関を明らかにすることが目的である。 本年度では各種単結晶ホイスラー合金のスピン偏極率とスピン依存ゼーベック係数の相関を明らかにする段階までには至っていないが、その相関を明らかにするための横型ナノスピン素子の確立と、熱流誘起スピン注入効果の観測可能な測定系の構築に成功している。 以上のことからおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
Si基板上に形成した種々のホイスラー合金を横型ナノスピン素子へと加工し、熱流誘起スピン注入効果を観測し、その効率とスピン偏極率との相関を明らかにしていく。 具体的には、種々のホイスラー合金のスピン偏極率を電流誘起スピン注入の信号の解析から、スピン依存ゼーベック係数を熱流誘起スピン注入のスピン信号の解析から算出し、その相関を明らかにし、スピン偏極率とスピン依存ゼーベック係数の両立が可能な材料を探索する。
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