2016 Fiscal Year Annual Research Report
HMGB1が骨髄由来間葉系幹細胞に与える影響の検討
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16H06991
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
古味 佳子 岡山大学, 大学病院, 医員 (80782028)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 間葉系幹細胞 / 組織再生 / 創傷治癒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,骨髄内の間葉系幹細胞を損傷皮膚へと誘導することで組織再生を促進する因子として近年注目されているhigh mobility group box1 (HMGB1)が骨髄由来間葉系幹細胞の多分化性や免疫調節性などの機能にどのような影響を与えるかを明らかにする事で, より効率的な組織再生療法の開発を目的としている.そのため,①創傷治癒過程におけるHMGB1の発現ならびに分布を経時的に組織学的,分子生物学的に解析し,②HMGB1の骨髄由来間葉系幹細胞(BMMSCs)に対する多分化性ならびに免疫調整性への影響を,HMGB1存在下での細胞培養で検討する.さらに③ マウス大腿骨穿孔モデルにHMGB1を局所投与し,HMGB1が組織再生に与える影響を解析検討する. 我々はこれまでに,マウス大腿骨穿孔モデルにて,炎症性サイトカインが豊富な創傷治癒部位に宿主間葉系幹細胞が集積すること,また集積した宿主間葉系幹細胞は炎症性サイトカイン(TNF-α)の影響により間葉系幹細胞の免疫調整能に重要であると報告されているFasLの発現を上昇させ,隣接するCD3陽性T細胞のアポトーシスを誘導することで宿主免疫の抑制作用を増強することを示唆した研究結果を得ている.一方,表皮水疱症の壊死過程から大量に放出されるHMGB1が間葉系幹細胞を刺激して血中に動員し,損傷皮膚再生を誘導していることが報告され,難治性皮膚潰瘍に対する臨床治験も開始されている. 今後は,強力な細胞集積因子と見なされているHMGB1の間葉系幹細胞に対する生物学的機能を明らかにし,間葉系幹細胞による,より効率的な組織再生療法の開発に繋げていく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
我々はこれまで,マウス大腿骨穿孔モデルにおいて穿孔1日後に宿主間葉系幹細胞ならびに炎症性サイトカインの発現が上昇することを組織学的に確認できている.創傷治癒過程における間葉系幹細胞の集積時期は,過去の報告より少し早いが,大腿骨骨髄は内在性幹細胞が周囲に豊富であり,集積時期が早くなったと考えられる. マウス大腿骨穿孔モデルにおけるHMGB1発現動態は現在解析中である.HMGB1の集積は,宿主間葉系幹細胞ならびに炎症性サイトカイン同様に組織学的には穿孔1日後が発現のピークであると考えられるが,繰り返し検討を行い,創傷治癒過程におけるHMGB1発現動態を解明していく.
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Strategy for Future Research Activity |
現在,マウス大腿骨穿孔モデルにおけるHMGB1発現動態の解明のために,創傷治癒過程におけるHMGB1抗体の分布を免疫染色で組織学的に評価を繰り返し行っている.並行して,HMGB1抗体の創傷治癒過程における経時的変化をフローサイトメトリーにて分子生物学的に解析する.さらに,HMGB1の間葉系幹細胞への影響の解明を行なうために,HMGB1を添加したマウス骨髄由来間質細胞(mouse bone marrow stromal cells)の多分化性を骨細胞分化誘導・脂肪細胞誘導後,分子生物学的に評価する.また免疫調節性をFasLの発現を免疫細胞染色及びフローサイトメトリー解析にて評価する.さらに,マウス大腿骨穿孔モデルへHMGB1含有コラーゲンスポンジを局所投与し,治療効果を組織学的に検討し,組織再生療法の開発へ繋げる.
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