2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16H07178
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
藤川 真樹 工学院大学, 情報学部(情報工学部), 准教授 (20594716)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 暗号・認証等 / 情報システム |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度の研究実績は,以下の通りである. 1,複数の物理的特性をもつ「1つの機能性材料」を開発するために,実験と検討を重ねた結果,これまで使用してきたガラス蛍光体をベースとしたアプローチではなく,分相ポーラスガラスに銀ナノ粒子をドープするというアプローチを取ることにした.分相ポーラスガラスは,ランダムな大きさと形状をもつ複数の孔を有している.また,銀は紫外線励起によって蛍光することが知られている.このため,ドープによって銀ナノ粒子が孔の中に入ることで,カメラによって孔の構造画像(光学特性)が,光励起によって蛍光画像(光学特性)が,また,蛍光X線分析によって銀の含有量(金属特性)が,それぞれ得られる可能性がある.分相ポーラスガラスが珪酸ガラスを主成分とする場合,800℃以下の温度であれば孔がふさがることはないと考えられるため,陶磁器の真正性判定の材料に使える可能性がある. 2,マルチモーダル型人工物メトリクスの適用先として合成樹脂製の人工物に着目し,当該人工物に,物理的特性が異なる2つの特徴情報(光学特性,電気特性)を持たせるアプローチを試みた.ちなみに,当該人工物の具体的な例として,偽造品の存在が確認されている有価カード(クレジットカード)がある.実験では,導電性ポリマー塗料とアップコンバーション蛍光体粉末の混合物を用いて,合成樹脂製の基材(ポリプロピレン板)上に薄膜を形成した.そして,実験により,光励起による蛍光画像(光学特性)と渦電流法によるシート抵抗(電気特性)が非接触によって抽出できること,およびこれらがサンプルごとに異なる値を示すことを確認した.また,これらの値には再現性があることも確認した. 3,上記2,について,研究成果をまとめた論文を発表した.内訳は,原著論文(審査中)が2件,国際会議(査読付き)が1件,国内口頭発表(査読なし)が3件である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1,複数の物理的特性をもつ「1つの機能性材料」を開発するために,当初はガラス蛍光体をベースとしたアプローチを取った.しかし,光学特性とは別の物理的特性(電気特性,磁気特性,振動特性)を持たせ,そこから顕著な特徴情報を抽出するためには大きなブレイクスルーが必要であることが分かった.これは,当該蛍光体を作製するためには,材料を溶融する必要があるからである(高温の炉の中では,材料が当該温度に耐えられず,材料がもつ上記のような3つの特性が消滅してしまうからである).このため,ガラス蛍光体をベースとしたアプローチを取りやめ,候補として考えていた分相ポーラスガラスを採用し,これに銀ナノ粒子をドープするというアプローチを取った.この判断は適切かつ妥当であると考えており,スケジュールの大幅な遅延にはならなかった.このため「概ね順調に進展している」と判断した.現在,孔の構造画像(光学特性)と光励起による蛍光画像(光学特性)を撮影できる光学系の構築に向けて準備を進めている. 2,マルチモーダル型人工物メトリクスの適用先として合成樹脂製の人工物に着目し,当該人工物に,物理的特性が異なる2つの特徴情報(光学特性,電気特性)を持たせるアプローチを試みた.具体的には,導電性ポリマー塗料とアップコンバーション蛍光体粉末の混合物を用いて,合成樹脂製の基材(ポリプロピレン板)上に薄膜を形成した.そして,各サンプルから光励起による蛍光画像(光学特性)と渦電流法によるシート抵抗(電気特性)が非接触によって抽出でき,それぞれの値がサンプルごとに異なることを確認した.この結果は狙い通りのものであり,スケジュール通りに終えることができた.このため「概ね順調に進展している」と判断した. 3,研究成果をまとめた論文の発表件数については,当初のスケジュール通りである.このため「概ね順調に進展している」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
1,今年度は,ガラス蛍光体ではなく分相ポーラスガラスをベースとし,これに銀ナノ粒子をドープしたガラスを機能性材料の候補とする.そして,そこからカメラによる孔の構造画像(光学特性),光励起による蛍光画像(光学特性),および蛍光X線分析による銀の含有量(金属特性)を非接触で抽出し,サンプルごとにこれらの特徴情報が異なることを確認する.はじめに,応用物理学の専門家のアドバイスを得ながら,分相ポーラスガラスに銀ナノ粒子をドープしたサンプルが作製できることを確認する.つぎに,上記2種類の画像(孔の構造画像,蛍光画像)を撮影するために,光学機器メーカーの支援を得ながら,光学系を構築する.そして,サンプルごとに特徴情報が異なることを確認する.なお,銀の含有量(金属特性)については,蛍光X線分析装置を用いる. 2,これまでは,光励起によって近赤外線を発光するガラス蛍光体を使用してきた.当該蛍光体から特徴情報(光学特性)を得るためには,高価な赤外線カメラを使用する必要があり,得られる画像も情報量の少ないモノクロ画像であった(当該画像には,蛍光の強弱が画像として反映される).このため今年度は,安価な可視光カメラでも特徴情報を捉えることができ,情報量が多いカラー画像を得ることを目標とする(これにより,蛍光の強弱に加えて複数の色情報を得ることができる).具体的には,応用物理学の専門家のアドバイスを得ながら組成と母材を調整することで,複数のピーク波長をもつ可視光を発光する新しいガラス蛍光体を開発する.なお,当該蛍光体の粉末を人工物(陶磁器)に焼き付けることで,従来技術よりも偽造の困難性と真正性の確度を高めることができる. 3,上記1と2によって得られた材料を用いて転写シート上に2次元コードを形成し,これを陶磁器に焼き付ける実験を行う.そして,当該コードが視認困難であることを確認する.
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Research Products
(4 results)