2016 Fiscal Year Annual Research Report
上方漫才からみる戦後日本における大衆と知識人に関する社会学的研究
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16H07247
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
後藤 美緒 日本大学, 文理学部, 助手 (60779932)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 社会学 / 知識人 / 大衆化 / 漫才 / 地域放送局 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度から29年度にかけておこなわれる本研究課題の初年度となる平成28年度は、当初の計画にしたがい「メディア・テクノロジーの展開と上方漫才の変遷」【課題①】、「上方漫才に現れるローカル・アイデンティティ」【課題②】に関する調査・分析に着手した。 具合的にはつぎの通りである。 第一に本研究の基盤となる史資料を収集した。演芸や興行に関する行政文書・社史、日本放送協会刊行物、放送用漫才台本、作家や芸人の自伝・回想録である。関西地域の公立、あるいは大学図書館での調査をおこなうことで、関東地方では流通しない史資料を得ることができた。 第二に地域放送局(大阪放送局)の地域性、先進性について歴史的に検証するための実態調査に着手した。とくに、近年公開されたアーカイブ資料に着目し、定点の比較を通して通史的な変遷を追う作業をおこなった。アーカイブスとの出会いによって放送事業における演芸の連続性と断絶という新たなる検討課題について示唆を得た。資料閲覧の制約が大きいため本年度は戦前期に限定したが、通史的な検討が可能となるため、次年度以降、占領期、高度成長期と視野を広げ検討する。 第三に異なる領域の研究者とのネットワークを構築した。研究活動の途上でメディア系の研究者と意見交換する機会を得た。このことによって飛躍的にメディア技術およびメディア政策について知見が増えて分析の深度が高まった。なお、調査内容の一部は日本大学社会学会(2016年7月)に学会報告をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していたインタビュー調査には着手できなかったものの、初年度に、従来の研究では未検討の資料に出会え、新しい研究の展開が予想される手ごたえを得られた。 研究を発展させるうえで重要な時期であった1~3月までの期間、学務上の大きな問題(建物の建て替え)が生じたため調査・考察の進捗に大きな支障があったが、学生アルバイトを利用することで効率的に基礎調査を進展できた。 こうした大きな困難があったものの、成果をまとめた成果報告について、2017年度春季に開催される社会学系とメディア系の学会での報告を予定している。 以上の理由から、当初の計画の通り進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は初年度の研究成果を踏まえ、【課題①】と【課題②】の調査、研究を継続するとともに、「上方漫才の成立――『啓蒙・消費・地域』の再編成と知識人の関与」【課題③】に着手する。具体的には、初年度に収集した漫才作家および番組の史資料を中心素材に、漫才作家に着目した個別研究をおこなう。同時に、アーカイブ資料の分析手法について理論的整理をおこなう。 また、研究遂行上の工夫として以下の点を考えている。第一に初年度同様、学生アルバイトを利用することで、効率的なデータの収集をおこなう。第二に研究活動を通じて出会った異領域の研究者と共同研究として本課題の一部を展開することになった。研究会等と通じ文析と理論を洗練させていき、領域横断的な研究としての成果の発表を、個人・共同研究として目指す。
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