2017 Fiscal Year Annual Research Report
Johann Sebastian Bach and the Aesthetics of Counterpoint in the Eighteenth Century
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16J00062
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
松原 薫 東京藝術大学, 大学院音楽研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | J. S. バッハ / ネーゲリ / チューリヒ / ブラームス / シュピッタ / 文法 / 修辞学 / 古典 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「対位法の巨匠」というJ. S. バッハ像に着目し、18世紀に彼の音楽が対位法との関わりにおいてどのように理解されたのかを検討するものである。 (1)2017年4月よりチューリヒ大学(スイス)の訪問研究員として同大学のヒンリヒセン教授のもとで研究に従事した(このうち2017年10月から2018年3月までの6ヶ月間は、日本学術振興会とスイス政府の協力による若手研究者交流事業に採択され、助成を受けた)。スイス研究滞在中には、19世紀初頭にチューリヒを拠点として活動し、バッハの音楽を世に広めることに貢献したネーゲリの著述について検討した。その中でも重要な成果は、これまでバッハ研究において注目されてこなかったネーゲリの活動初期の手稿をチューリヒ中央図書館で閲覧し、読解を進めたことである。この手稿を通じて、1790年代に遡ってネーゲリの思想の形成過程を把握することが可能になった。またバッハの音楽を「古典」として称揚するネーゲリのバッハ受容のあり方が、後世にどのように引き継がれたのかを明らかにするために、ブラームスと、バッハ伝の著者として知られるシュピッタとの往復書簡など、19世紀後半のバッハ受容にまで調査の対象を広げた。 (2)マッテゾン『完全なる楽長』においてポリフォニーと旋律の関係づけに重要な役割を果たしたSymphoniurgieという語に着目し、この概念史を明らかにした。具体的には17世紀のドーニやキルヒャー、マッテゾンとほぼ同時期に活動したヴァルターの『音楽辞典』、18世紀中庸以降の音楽書における用例を調査、比較検討した。 (3)キルンベルガー『純正作曲の技法』、ズルツァー『諸芸術の一般理論』、コッホ『音楽辞典』において、文学から借用した文法、修辞学という二つの概念がどのように位置づけられているのかを考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
18世紀のバッハ解釈と対位法について予定通り研究を進めることができたほか、スイス研究滞在中には、現地の研究者との意見交換、チューリヒ中央図書館でのネーゲリに関する資料調査を順調に進めることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
さらなる検討を要する主題(ライヒャルト『音楽芸術誌』におけるバッハ解釈および古楽への関心、また18世紀における対位法と調和/和声(Harmonie)という二つの概念の関係の変遷など)について研究を進める。その上で最終的には、本研究課題の遂行を通じて検討した個々のトピックの相互関係を整理し、それらを「18世紀の音楽美学におけるバッハ」という文脈の中に位置づける。
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Research Products
(4 results)