2016 Fiscal Year Annual Research Report
寡占市場における企業の戦略的行動を考慮した環境政策に関する理論分析
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16J00067
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
宮岡 暁 関西大学, 経済学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 不完全競争 / 非対称情報 / エコラベリング / 戦略的環境政策 / 排出税 / シグナリング |
Outline of Annual Research Achievements |
①国際寡占競争下における排出税政策のシグナル効果に関する研究 本研究では、自国企業と外国企業との間で互いの生産性に関して情報の非対称性が存在する状況に焦点を当て、各国政府が設定する均衡排出税率の特徴について分析を行った。上記のような情報環境の下では、各国政府が設定する排出税率には当該国企業の生産性に関する情報が織り込まれているため、各国企業は相手国の排出税率を観察することで相手国企業の生産性に関する信念の改訂を行うことになる。本研究では、排出税率がこのような“シグナル”としての機能をもつとき、各国政府は自国の排出税率を上方に歪めるインセンティブをもち、またその結果、先行研究で分析されている企業間で情報の非対称性がない状況に比べ、各国の社会厚生が改善する可能性があることを明らかにした。
②エコラベリング制度の導入効果に関する研究 エコラベリング制度に関する先行研究のサーベイを行った。特に、エコラベリング制度について理論的な分析を行っている文献の内容を確認し、そこで使用されているモデルの構造や分析の焦点について検討を行った。またこの作業と並行して、日本のエコマーク制度や国際的な森林認証制度であるFSC(Forest Stewardship Council)認証制度など、エコラベリング制度の複数の実例についても調査を行い、実際の制度の運用のされ方についての情報収集を行った。これらのサーベイ・情報収集により、エコラベリング制度の分析に適した経済モデルの種類や実際の制度運営の中で問題となっている点などについて把握することができた。現在、この内容を土台として、具体的な経済モデルの構築とその分析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「国際寡占競争下における排出税政策のシグナル効果に関する研究」については、【研究実績の概要】で述べた通り、新規性のある具体的な結果を得ることができた。内容についてはすでに、論文“The Signaling Effect of Emission Taxes under International Duopoly”としてまとめ、複数の研究会ならびに国内の学会にて報告を行っており、現在は査読付き国際学術誌に投稿中である。 一方、「エコラベリング制度の導入効果に関する研究」については、複数の経済モデルによる分析を試みているものの、残念ながら現段階では意義のある結果を得ることができていない。先行研究や実際のエコラベリング制度に関する情報収集の成果を踏まえ、今後、分析方法の修正を行うことが必要な状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
「国際寡占競争下における排出税政策のシグナル効果に関する研究」については、投稿先から査読結果の連絡があり次第、その内容をもとに改訂作業を行い、再投稿あるいは別の学術誌への投稿作業を行う。 一方、「エコラベリング制度の導入効果に関する研究」については、今後、経済モデルの構築とその分析方法の再検討を行っていく予定である。特に、エコラベリング制度の理論分析では、企業間の競争構造や企業・消費者間の情報構造に関して様々なモデル化の方法が考えられるため、その中から適切な経済モデルを選択することが重要となる。現段階では、産業組織論でも用いられている「垂直的製品差別化モデル」が特に有用であると考えており、同モデルをベースにした経済モデルの構築を検討している。
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