2017 Fiscal Year Annual Research Report
認識・行為・制度をめぐる「不確実性」の理論的および応用的研究
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16J00323
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
加納 寛之 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | uncertainty framework / climate change / IPCC / evidence / agreement / value / science-policy interface / boundary arrangement |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究は大きく以下の2点からなる。第一に、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC; Intergovernmental Panel on Climate Change)で採用されている不確実性の定義について検討した。IPCCが現在採用する不確実性の定義は、2010年に発行されたガイダンス・ノートに依拠する。その中で、用いられている術語の曖昧性については、すでにいくつかの研究があるものの、依然として、まだ手付かずの問題が残っている。本研究では、不確実性を規定する尺度のひとつ、確信度を構成する二つの測定基準、「証拠」と「専門家の見解の一致度」の関係性について明確にした。 第二に、IPCCの各ワーキング・グループ(WG)の証拠の集約基準について検討した。WGIがピアレビューを経た科学的知見に基づく比較的ロバストな証拠を扱うのに対し、WGII、WGIIIでは、grey literatureと呼ばれる証拠群であったり、社会的な価値を考慮する必要がある。本研究では、各WGで採用される証拠の特徴を明確にした後、どのような証拠収集のアレンジメントの実現されるのかを描き出した。 また、今年度は9月より半年間、イギリス、London School of Economics and Political ScienceのCentre for Philosophy of Natural and Social Scienceで、visiting studentとして研究に従事じた。現地の研究者との交流を通して、本研究の議論の細部に関わる論点を明確にした。この点については、研究をまとめる際に反映していく。それと同時に、政策科学やリスク研究の研究者、および、気候変動政策の実務者との接点を持ちながら研究を進めていく重要性を学んだ。この点についても、来年度以降、意識的に働きかけていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の研究対象に関わる論点すべてについて、一定の見通しを与えられた。この点で、研究の内容そのものに関しては、おおむね順調に進展している。しかしながら、イギリスでの在外研究では、計画していたよりも多くの進捗があったものの、研究の発表先については再考を促されることになった。この点に関しては、今後の研究発表において適切な戦略を立てる必要な準備期間でもあったと捉えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の最終年度に当たる来年度では、これまでの研究成果をまとめることを中心に、研究に取り組んでいく。すでにこれまでの研究内容については、学会報告を済ませており、今年度は論文執筆、投稿に重点を置く。査読にかかる期間が長いことを念頭に置き、計画的に投稿していきたい。
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Research Products
(3 results)