2018 Fiscal Year Annual Research Report
自生的秩序としての倫理的消費の制度化-フェアトレードの市場化をめぐる日英比較研究
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16J00535
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
畑山 要介 立教大学, 社会学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 社会学 / フェアトレード |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、第1にイギリスにおける聞き取り調査、第2に日本におけるフェアトレードの言説分析を行った。 (1)イギリスにおける聞き取り調査 ロンドンでは非営利団体のOxfamに聞き取り調査を行った。2000年代以降、イギリスではニューレイバーにおける公共政策の転回とともに慈善運動的・社会運動的なものが消費者志向を帯びるようになった。今回の調査は、この「社会運動の消費者志向的転回」の現状を把握することを目的としてOxfamの直営店にて販売者・消費者に聞き取りを実施したものである。調査の結果、社会運動の消費者志向は既に深く浸透し、Oxfam側もファッションとしてフェアトレードを積極的に売り出していることが明らかとなった。ただし、ファッション的とはいえフェアトレード商品が華美に装飾化・デザイン化されているわけではなく、商品の質感それ自体が消費者に高く支持されているものと理解できた。またそれが慈善運動・社会運動として人々においては矛盾なく受け入れられていると理解できた。なお、ポーツマスでは国際フェアトレードシンポジウムに参加し、昨今のフェアトレードに関する多くの知見を得ることができた。 (2)日本国内の言説分析 本年度の後半は、前年度に引き続いて日本国内のフェアトレードの制度化について分析を進めた。日本では1970年代以来、市民運動として展開されてきたフェアトレードは1990年代中頃には消費志向化していく。新聞記事分析などを進めることで、こうした消費者志向的転回は、当時日本の各地にできた小規模でローカルなショップを軸に進行していることが明らかとなった。消費者志向が大企業によるマーケティング的に形成されたものというよりも、むしろ草の根運動の中で展開されていったという新たな理解を得ることができた。フェアトレード運動それ自体が「抵抗の言説」と「享楽の言説」の二重の層のなかで制度化されたと考えられる。
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Research Progress Status |
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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