2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16J00547
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
可香谷 隆 東京工業大学, 大学院理工学研究科(理学系), 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 幾何学的測度論 / 接触角 |
Outline of Annual Research Achievements |
表面張力問題で用いられる界面エネルギーと接触エネルギーを考察することにより,接触角構造の一部を明らかにしてきた.ここでの界面エネルギー及び接触エネルギーは一般次元ユークリッド空間内における領域を用い,その領域内の集合に対して定義される.それぞれ,領域及び集合はそれぞれ個体の容器と一つの相とみなすことにより,上記のエネルギーが導出される.従って,集合の領域内における境界は曲面となり,界面とみなすことができる.界面エネルギーと接触エネルギーの総和エネルギーに対する体積保存条件下における臨界点である集合は,その集合の領域内における境界に対し,適切な正則性を課せば,平均曲率一定で接触角を持つ曲面であるという性質を持つ.この臨界状態で現れる曲面に対して,ModicaによりModica-Mortolaエネルギーを用いた近似理論が考察されている.しかし,この近似理論は最小点に対するガンマ収束性理論であるため,報告者はこれを臨界点に拡張した収束性理論に拡張した.収束性理論を完成させるためには,コンパクト性を持ち,曲面を記述できる数学的な概念が必要であり,varifoldと呼ばれる多様体の測度化に相当する概念が有効である.varifoldに対する研究はAllardをはじめとした様々な研究者により行われており,rectifiablityや一般化された平均曲率の定義などが挙げられる.一方,本研究においては,上で述べたように接触角構造を伴うエネルギーを扱うため,varifoldに対して新たに接触角を定義する必要があった.そこで,報告者はvarifoldに対する接触角の定義も行っている.また,今後の研究の見通しをつけるために,varifoldの解析では欠かせないAllard型の単調性公式を,接触角を伴うvarifoldに対する単調性公式への拡張も考察しており,実際に導出している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の研究目的は,研究実績で述べた特異極限に関するものであり,定常問題,勾配流に対する特異極限について述べた.定常問題に対する特異極限については,研究実績で述べた通り,ほとんど解決した.定常問題に対する特異極限問題における解析手法は接触角構造を伴わない特異極限問題に対する既存の考察により,勾配流に対する特異極限問題に対しても有効であることが期待出来る.特に,勾配流に対する特異極限問題に対する考察でも接触角条件付きvarifoldが必要であることが予測され,接触角条件付きvarifoldに対する考察は重要であると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況で述べた勾配流に対する特異極限問題については引き続き考察を行う.また,研究実績で述べたModicaによるガンマ収束性理論では,極限として総和エネルギーの弱い意味での体積保存条件下における臨界状態に収束していることを示しているが,界面に相当する曲面に対する正則性はこの理論だけでは明らかではない.従って,様々な研究者によりこの曲面に対する正則性理論が考察されてきた.本研究で用いたModicaの理論を臨界点の収束性に拡張した問題では,極限として接触角条件付きvarifoldが得られることを示したが,このvarifoldにおいても正則性が明らかではないため,接触角条件付きvarifoldに対する正則性理論についても考察する.ただし,varifoldに対する内部正則性理論はAllard型の単調性公式が重要な役割を果たしており,接触角条件付きvarifoldに対する正則性理論は研究実績で述べた拡張したAllard型の単調性公式を用いることが予想される.
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