2016 Fiscal Year Annual Research Report
前２世紀末から前１世紀末の地中海世界における共同体運営の公的・非公的側面の相克
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16J00678
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| Research Institution | Kamakura Women's University |
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Principal Investigator |
伊藤 雅之 鎌倉女子大学, 学術研究所, 特別研究員(PD)
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| Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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| Keywords | 古代 / ヘレニズム / ローマ / ギリシア / アイトリア / マケドニア戦争 / リウィウス / 外交 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
2016年9月に東洋大学で開催されたサマーセミナーにて、共和政中期のローマにおいて、外国から派遣された使節の個々人へのローマ当局による現金贈与とその意味に関する考察を報告し、同時期のローマが、従来から知られていたように軍事面で積極的に海外への進出を志向するようになっていたのと併せて、外部の共同体への非公式・私的なチャンネルを通じての働きかけの重要性や技術の向上の必要性を強く認識するようになっていったことが見て取れるということを論じた。
また2016年夏には、前3世紀末に勃発した第一次マケドニア戦争とそれを終結させたフォイニケ和約をめぐるギリシア諸国およびローマの外交的角逐に関する議論を、新たに見つけた小アジアの碑文や、ローマの同盟国にして戦争中に同国を見捨てることになるアイトリア連邦により作成された石碑中の諸文書を駆使して、同連邦の外交姿勢の変化や、それを担った内外の人々の政治的動向や個人レベルでの交流をより細かく調査し、論文化した。同研究は論文雑誌『史林』で採用され、2016年の冬から17年の春にかけて、加筆・修正を行い、17年4月に「論説」として刊行された。
さらに2016年11月末に刊行された、高校生以上を読者として想定しつつ、古代以来の歴史書や文学を中心に、重要な著作、その著者や執筆の背景を説明した、池田嘉郎他編『名著で読む世界120』にて、半ば伝説の王政から共和政期ローマの歴史を詳述したティトゥス・リウィウスについて、同史家が用いた史料や歴史観に触れつつ論じた。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はまず当初の予定通り、国内外の史料の収集・読解に力を注いだ。より具体的には小アジア、およびギリシアの辺境部に焦点を当てた碑文集や、比較的最近発見された碑文を活かしつつ行われた史料そのものへの検討、あるいはまたそこに登場する人間に注目した研究書の購入を進めた。また古代の歴史家たちのギリシア語・ラテン語の記述を参照しつつ、古代人の間で、特にローマの外交の文脈での金銭のやり取りや、それに類する個別的な紐帯を浮き彫りにする作業を進め、ローマの外交の中での贈物という従来そもそも議論の対象と見做されてこなかった領域や、一時期ローマの重要な同盟国であったアイトリア連邦という、碑文史料とそれを活かしたプロソポグラフィを用いての詳細な研究の余地がなお多く残っているローマの隣人の一角に、大きく踏み込み、その成果の一部を口頭、および論文の形で発表するに至った。発表に漕ぎ着けることができた研究数はそれほど多くはないものの、新しい領域を開く面があったという点を踏まえれば、全体として研究課題の進捗状況は、おおむね順調といってよいと考える。
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| Strategy for Future Research Activity |
当面は2017年9月に主に中国と韓国の西洋古代史研究者を招きつつ開催するシンポジウムで報告を行う予定の、紀元前2世紀に本格化するローマの東方進出と連動してギリシア人たちの間に広まっていったいわゆるパトロネージ関係、特にローマ人をパトロンとし、外国の個人や共同体をクライアントとする関係について、やはり既存の碑文史料の整理と新たなそれの探査を行いつつ検討を進める。また博士論文研究やそれと前後して行った研究で取り扱ったトピックの一つである、第一次マケドニア戦争から第二次マケドニア戦争前後、つまり前3世紀末から前2世紀初頭のローマとギリシアの外交関係やその手法について、よりその内容を発展させつつ、日本語化、さらに学会等での報告ないしは活字での発表を行う準備を進めていきたい。
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Research Products
(3 results)
