2016 Fiscal Year Annual Research Report
森林性ツル植物の林床での待機から林冠への登攀メカニズムに着目した生活史戦略の解明
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16J00768
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
森 英樹 筑波大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | クローン構造 / 生活史戦略 / 遺伝マーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は予定通り樹木に登はんしたツル植物のクローン解析を進めた。具体的には、調査地でのサンプリング、DNAの抽出実験、遺伝マーカーの開発および検出力の評価、クローン解析を、調査地に分布するツル植物の過半数を占めるフジについて行った。なお、サンプリングは地上高1.3m以上の登はん済みの個体を対象とした。フジのクローン解析の結果、6ヘクタールの調査地内に大小様々なクローンが検出され、最も大きいクローンのパッチサイズは0.5haに達することが分かった。また、最も大きいクローンは沢をまたいで検出されたことから、従来指摘されてきた匍匐枝によるクローン繁殖のみならず、樹木の樹冠間を乗り移ることで、クローン植物が抱える地形的制約を乗り越えることが明らかになった。フジの遺伝マーカーの開発と検出力の評価は論文としてSilvae Genetica誌に投稿し、現在は掲載予定である。フジのクローン解析の結果は論文として取りまとめ、現在はAnnals of Botany誌に投稿中である。 フジ以外のツル植物の種(ツルマサキ、イワガラミ、ツルアジサイ、ツタウルシ)については、サンプリング、DNAの抽出実験、遺伝マーカーの開発を行った。ツルマサキとイワガラミについては、遺伝マーカー開発のために、制限酵素を用いた次世代シーケンサーによるゲノムデータの収集およびライブラリの作成を行った(RAD-Seq)。 林床に待機するツル植物の評価を行うために、まずはフジを対象に、10m×120mのベルトトランセクトを用意し、その中に出現した高さ15㎝以上のラメットをすべてサンプリングし、DNAの抽出を行った。サンプリングした結果、土壌侵食を受けやすい急斜面にはラメットが全く分布しないことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね当初の計画通りに調査や実験が進んでいるため。ただし、遺伝学の実験や解析などは初めてで不慣れな部分が多かったことから、想定していたよりも少し時間を要した。しかし、今年度からはよりスムーズに研究が進められると想定されるため、研究課題の遂行状況は全体として、おおむね順調であると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はフジ以外の種で開発した遺伝マーカーの検出力の評価を行い、その結果を取りまとめて論文にする予定である。また、それらの種についてもフジと同様にクローン解析を行うことで、フジとの生活史戦略の違いについて取りまとめ、論文にする予定である。 林床で待機する個体については、フジについてはクローン解析を行い、また、他のツル植物の種についても、同様にサンプリングを行い、DNAを抽出し、クローン解析を行う予定である。
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Research Products
(5 results)