2016 Fiscal Year Annual Research Report
外洋性魚類の鉛直移動パターン予測へ向けた採餌生態と体温維持戦略の解明
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16J00837
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中村 乙水 長崎大学, 海洋未来イノベーション機構, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 外洋性魚類 / 鉛直移動 / 採餌 / 体温 |
Outline of Annual Research Achievements |
海洋は鉛直方向に環境の変動が激しく、特に表層から深度数百メートルまでは温度環境が大きく変化する。外洋性魚類の中には表層を主な生活圏としながらも、深海で餌を食べるものが多く知られており、外洋性魚類の鉛直移動パターンを解釈するためには、採餌だけでなく温度環境を利用した体温調節も含める必要がある。本研究は、外洋性魚類であるカジキ類とサメ類の鉛直移動パターンと体温および採餌行動を野外で計測し、体温調節と採餌戦略から鉛直移動パターンの要因を探ることを目的としている。今年度はカジキ類とサメ類への記録計の装着技術の確立と短期間の行動データの取得を目標とした。カジキ類としてメカジキ、マカジキ、クロカジキを対象に野外実験を行ったが、放流個体を確保することができなかった。サメ類としてハチワレ1個体、アオザメ1個体、ジンベエザメ4個体の放流実験を行うことができた。このうちハチワレ1個体、ジンベエザメ3個体から行動データが得られ、ジンベエザメのうち2個体からは世界初記録の体温データも得ることに成功した。ジンベエザメの体温は表層の水温とほとんど同じなことから、ジンベエザメは外温性であることが確認されたが、鉛直移動によって外界の水温が大きく変化しても体温はほとんど変化することはなく、ジンベエザメは巨体に由来する慣性恒温性を持つことが示唆された。ジンベエザメの巨体は、冷たい深海まで潜る際に体温を維持する上で有利に働くと考えられる。今後は映像記録を得ることで、採餌行動の記録を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
カジキ類を対象とした野外調査を行ったが、記録計を装着するのに適した状態で放流個体を確保することができなかった。また、海況が悪く予定通り調査を行えない期間が多かった。ジンベエザメからは体温データを得ることに成功したが、採餌行動を記録することができなかった。これらの理由により、比較に足る複数魚種からデータが得られていないことや、採餌と体温を同時に計測できていないことから、進捗はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
十分なデータを取得するためには、放流個体が確保できるように対象魚種を広げることや、採餌行動を記録するために放流期間や放流個体数を増やすことが必要である。そこで、これまでに手法が確立しているマンボウ類やサメ類も対象に入れて研究を進める。また、ジンベエザメにおいて体温低下時と体温回復時において外界との熱交換が異なることが示唆された。この現象はマンボウでも見られており、魚類には外界との熱交換を生理的に調節する能力があることが示唆された。今後は、生理的な調節の詳細を調べることも目標にする。
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Research Products
(5 results)