2017 Fiscal Year Annual Research Report
胚発生を制御するシグナルカスケードの要素としての機械的力に関する研究
Project/Area Number |
16J01027
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石橋 朋樹 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | メカノバイオロジー / キイロショウジョウバエ / 発生生物学 / Hsp |
Outline of Annual Research Achievements |
多細胞生物の発生過程では、ダイナミックな形態形成の変化が起こる。この変化には、細胞の増殖や移動によって生じる機械的力が関与している。一方、細胞は機械的力を生じるだけでなく、機械的力を完治できるということが、近年になってわかってきた。私は、“発生過程で機械的力が生じること”と、“機械的力がシグナルとして細胞に受容されること”という2つの知見から、“発生で生じる機械的力が、発生を制御するシグナルカスケードの構成要素として働く”という仮説を立てた。本研究課題の目的は、この仮設を検証し、機械的力が、発生制御シグナルのカスケードの要素として機能しているかどうかを明らかにすることである。この仮説を検証するためには、機械的力の発生と応答を関連付けて、in vivoで解析する必要がある。これを実現するために、遺伝学的なアプローチを駆使できるショウジョウバエを用いることとした。申請者の仮説を検証していくために、平成29年度は、「機械的力シグナルの受容・伝達に必要な遺伝子(機械的力シグナル構成因子)を網羅的に探索、同定する」ことを目指して研究を行った。 平成28年度に同定した機械的力シグナル構成因子から、 3遺伝子(Hsp68, Hsp23, DNAJ-1)を選定し、その発現調節領域下流に、改変型緑色傾向タンパク質EGFPがインフレームで導入されたトランスジェニック動物を作出した。これらの胚を、スペーサーによって0.1 mmの間隔を空けた2枚のガラスプレートに挟んで圧迫することで、機械的力の負荷を行った。機械的力を負荷したまま、2時間、共焦点レーザー顕微鏡を用いてライブイメージングを行った。その結果、これらの遺伝子は、圧迫によって有意に発現上昇することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画では、平成29年度には、(1)機械的力の負荷によって発現変動する遺伝子に蛍光タンパク質タグをつけ、機械的力に応答するレポーター(機械的力レポーター)を作出する、(2)胚時期に発現する遺伝子のノックダウンを行い、機械的力レポーターの発現変動に関わる遺伝子を同定する、という2つの研究を行う予定だった。 (1)に関しては、当初の年次計画通り、機械的力レポーターとして、機械的力の負荷に応答する遺伝子にEGFPタグを付加したトランスジェニック系統の作出に成功した。また、この機械的力レポーターが、機械的力の負荷に対して発現が上昇することを確認した。以上から、(1)は計画通り順調に進展したといえる。 また、平成30年度に行う予定であった機械的力レポーターの発現部位・発現時期の特定を、先んじて行った。この点に関して、期待以上の進展があった。 しかし、上述した(2)に関しては、ショウジョウバエ胚時期でのRNA干渉法によるノックダウンが機能しなかった。現時点では、胚時期での遺伝子のノックダウンを可能とする条件の検討や、RNA干渉法以外の手段の検討を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、ショウジョウバエの胚発生の過程で生じる機械的力が、発生を制御する一連のシグナルカスケードの構成要素であることを明らかにすることである。これを行うため、平成30年度は、「機械的力シグナル構成因子の同定」を目指す。 まず、ショウジョウバエ胚時期では、通常のRNA干渉法では遺伝子ノックダウンが起こりにくいことがわかっているので、胚時期での遺伝子ノックダウンを効率的に行うことが可能になるシステムを構築する。 続いて、構築したシステムを用いて、機械的力レポーターを持つトランスジェニック胚に対して、ショウジョウバエの胚時期に発現することがわかっている650遺伝子について、ノックダウンを行う。 最後に、これらのノックダウン胚において、どのような発生異常が生じるかを調べる。機械的力シグナル構成因子のノックダウン胚において、発生の異常が生じることを示すことで、機械的力が発生を制御するシグナルの構成因子として働いている可能性を示唆することができる。
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