2016 Fiscal Year Annual Research Report
かにパルサーの位相分解とガンマ線偏光観測によるアウターギャップモデルの検証
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16J01069
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
水谷 深志 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 検出器開発 / ガンマ線 / 宇宙線 / 気球実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は原子核乾板から構成されるエマルション望遠鏡を用いてパルサーが放射するガンマ線を位相分解し、位相ごとのガンマ線の偏光方向を観測することによってパルサーの電磁波放射モデルに制限をかけることを目的とするものである。 我々のグループでは2018年に行う気球実験に向けて、2015年度気球実験の解析と2018年気球実験のための準備を進めている。申請者においてはパルサーを位相分解観測する上で不可欠となるエマルション望遠鏡のタイムスタンパー部である多段シフターのデータ解析と次期フライトモデルの開発を進めた。2015年度気球実験のデータ解析においては14時間22分のフライトのほぼ全ての時間に対して、時刻付与を行う処理を確立した。本データ解析で開発した処理系をベースラインとすることで、今後の気球実験の長時間化・大面積化に対しても現実的なタイムスケールで解析できることを示すことができた。また、多段シフターによる時刻付与の時間分解能をこれまでの実績から1桁近く改善させ、パルサーの位相分解観測を実現する見通しを得るとともに、今後の気球実験実施において留意すべき点の洗い出しも行うことができている。次期フライトモデルの開発においては共同研究者と共に作業を進め、基礎性能を評価する測定系の開発を新たに行い、実験で運用可能な基礎性能を次期フライトモデルが持っていることを確認できつつある。また、さらなる基礎性能向上のための開発要素の洗い出しや観測時間の拡大に向けた多段化についても見通しが立ってきている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題でもっとも重要な開発要素である大面積化・長時間化を実現するための多段シフター次期フライトモデルはこれまでの多段シフターと比べてデザインが大きく変更されるため様々な困難が予想されたが、開発が進んでおり基礎性能の評価・改良の見通しなどが得られているなど一定の成果を挙げたと言える。加えて、2015年度気球実験の解析が進んだことで位相分解観測の実現性についてはより向上した。一方で、本研究課題において2年目(2017年度)に実施することを想定していた海外での気球実験の採択が2018年度実施となったことで、実験の実施については1年間のズレを余儀なくされている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」の項でも述べたように気球実験の実施は1年のずれを余儀なくされている。この空いた時間を使って、多段シフター次期フライトモデルの改良を当初の検討よりも推し進め、フライト条件を緩和しフライトチャンスの拡大やフライト時間の長時間化などに貢献し、成果の最大化を狙う。また、フライト後のデータ解析を見据えた偏光観測のための解析系の整備を進める。
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