2017 Fiscal Year Annual Research Report
Streptomyces属放線菌におけるComXフェロモン型分子の探索
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16J01117
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
星野 翔太郎 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 遺伝子破壊 / 相同組み換え法 / 接合伝達 / 基質認識 / プレニル基転移酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度バイオインフォマティクス解析によって同定されたStreptomyces bottropensis株由来のcomQホモログであるsboQ遺伝子の破壊実験を行った。遺伝子破壊は相同組み換え法により行った。最初に遺伝子破壊用ベクターを作成して大腸菌への導入を行い、接合伝達によってStreptomyces bottropensis株におけるsboQ遺伝子をapramycin耐性遺伝子へと置換した。apramycin耐性株を選択し、該当領域に対するPCR法を行うことでsboQ遺伝子の破壊が完了したことを最終的に確認した。今後、得られた破壊株と野生株の間の代謝プロファイルや表現型の比較を行うことで、sboQ遺伝子の生理的機能や生合成産物の化学構造に関する知見が得られることが期待される。 上述の遺伝子破壊実験に加え、今年度はSboQタンパク質の基質認識に関する研究を行った。昨年度、トリプトファンのFmoc誘導体及びGPPを基質とした酵素反応によってSboQがComQと同様の酵素活性を持つことを明らかとしていたが、本年度は基質として多岐に渡るトリプトファン誘導体やトリプトファン含有ペプチドを用いた酵素反応を行い、SboQ酵素が様々なトリプトファン誘導体を基質として受け入れることを明らかとした。加えてDMAPP、FPP及びGGPPといった鎖長の異なるプレニル供与体を基質とした酵素反応も行い、SboQ酵素がGPPのみならずFPPやGGPPのような鎖長の大きなプレニル供与体も基質として受け入れることを明らかとした。これらの結果からSboQは極めて寛容な基質認識を有しており、SboQ酵素を利用した非天然型化合物の創出という観点についても今後の展開が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はまず、野生株であるStreptomyces bottropensis株におけるsboQ遺伝子の破壊を達成した。本株については遺伝子破壊に関する実績が無かったため、遺伝子破壊手法の選択や遺伝子破壊条件のスクリーニングなどに時間を要したものの最終的にはsboQ遺伝子の破壊を達成し、PCRによっても確認された。sboQ破壊株を得られたことで今後sboQ遺伝子の生理的な機能解明や生合成産物の構造解析へと繋がることが強く期待され、最終年度の研究に向けて大きく前進したと言える。 また、SboQタンパク質のprenyl transferaseとしての機能解明についても様々な基質を用いた酵素反応解析によって大きく前進した。SboQは既存のComQタンパクと比べても極めて寛容な基質認識を示している為、今後本酵素を用いた非天然型化合物の創出という観点からも研究が進むことが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず、sboQ破壊株を利用したsboQ遺伝子の機能解析を行う。まず、sboQ遺伝子が有する生理的な機能解明を行う為に破壊株及び野生株を様々な寒天培地上で培養し、各々の表現型を観察する。当初の予想通りsboQ遺伝子がクオラムセンシングに関与している場合、胞子形成能や生育速度あるいは色素生産などに差が見られることが期待される。また、sboQ遺伝子はComXフェロモン様化合物の生産に関与することが予想されるため、遺伝子破壊株及び野生株による代謝物をLC-MSによって解析することで、生合成産物の探索を行う。また、その生合成産物がクオラムセンシングに関与している場合、更に別の二次代謝産物の生産が誘導あるいは抑制される可能性がある為、それらについてもLC-MSによる探索を行う。 最終的に破壊株と野生株の間に何らかの差異が認められた場合、それらが真にsboQ遺伝子に起因することを確かめる為に破壊株に対するsboQ遺伝子の再導入(遺伝子相補)を行い、形質や代謝プロファイルが回復する事を確認する。 また上述の破壊株に対する研究と並行して、sboQ及び周辺遺伝子の異種発現を行う。sboQ遺伝子の近傍には基質候補であるsboXに加え幾つかの修飾酵素様の遺伝子も隣接しており、それらをクローニング後、放線菌異種発現用のベクターへと導入してSteptomyces lividans株など、当研究室で保有する異種発現宿主へと導入する。その生合成産物の構造を決定する為に異種発現株に対するLC-MSを用いた代謝解析を行う。
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Research Products
(12 results)