2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16J01139
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
李 正勲 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 非アルキメデス的力学系理論 / ジュリア集合 / 拡大写像 / 力学系の安定性 / エルゴード理論 / ゼータ関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究1. 非アルキメデス的な拡大写像の力学系におけるジュリア集合上の力学系の安定性: 拡大写像か生成する力学系におけるジュリア集合上の力学系の安定性を示した. ジュリア集合上の力学系の安定性とは与えられた有理写像の係数が少し変わってもジュリア集合上の力学系が位相的に同じであることを意味する. この結果は複素力学系でのMane-Sad-Sullivanによる結果(1983)の非アルキメデス的類似と考えられる. 研究2. 拡大写像の位相的特徴付け: 研究1における拡大写像を位相的に特徴付けるために臨界点との関係を調べた. 複素力学系では拡大写像は臨界点の軌道の閉包がジュリア集合と交わらないという位相的な性質で特徴付けられる. 一方, 非アルキメデス的な力学系ではジュリア集合の位相的な欠陥(非コンパクト性など)及び写像の局所的な性質(単射性など)が臨界点だけでは決まらないことから臨界点だけで特徴付けることは無理であることがわかった.そこで, 既存の力学系をBerkovich空間上の力学系へ拡張し, 拡大写像の位相的な性質を調べた. 現在までに得られた結果としては, 拡大的な多項式写像の位相的な特徴付けと, 拡大的な有理写像に対してはこの特徴付けが使えないことを示す反例を見つけたことがある. 研究3. エルゴード理論とゼータ関数論: 二つのパラメーターを持つ特殊なエルゴード変換を用いてリーマンゼータ関数, Dirichlet L関数などのゼータ関数(実際はあるクラスのゼータ関数が持つある性質を満たす有理型写像)のエルゴード平均値を調べた. この結果の応用として, Lindelof予想の力学系的な言い換えを得ることができた. この結果はSteuding (2012)の一般化である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究1に関しては当初の計画より早く結果を得ることができた. さらに, 当初の計画より先に進んで既存の力学系を拡張したBekorvich力学系上でのジュリア集合上の力学系の安定性の研究をし始めた. また, 研究1で得た結果からジュリア集合上の力学系の安定性の持たない有理写像の研究をし始めた. 研究2に関する当初の計画は既存の力学系での臨界点とコンパクト性の関係を見出し, 位相的な特徴づけを得るつもりだった. しかし, 当初の計画した通りでは不十分であることに気づき, 既存の力学系をBerkovich空間上の力学系へ拡張して拡大写像の位相的な性質を調べた. 研究3は当初の計画にはなかったものであるが, 力学系と数論に関する結果であるため本プロジェクトの延長線に置いてあると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
研究1をさらに拡張する. 最近の研究でジュリア集合上の力学系の安定性の持つ有理写像は拡大的写像だけではないものがわかったため, これらのクラスを調べて研究1の一般化を得る. また, ジュリア集合上の力学系の安定性の持たない写像に関してその力学系がとのような変化をするかを調べる. 研究2の有理写像に関する結果を得て, より一般化を試みる. 現在までの結果は多項式写像に対する位相的特徴づけであるため, まず拡大的な有理写像に対する位相的特徴づけを得る. 最近ではこのような結果はジュリア集合上に定義される距離に関する結果の一部であることがわかったため, このような結果はさらに一般化ができると予想される. すなわち, 写像が拡大性のもつ距離をジュリア集合上に定義し, これに関する位相的な特徴づけを得る. また, これらの一連の結果を用いてより一般なジュリア集合上の力学系の安定性を調べる.
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Research Products
(8 results)