2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16J01140
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
溝口 優樹 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 富豪層 / 国造 / 河内 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は「富豪層」が出現する史的背景として、国造に関する研究を進めた。具体的な事例として、凡河内国造として知られる凡河内氏をとりあげ、その姓・国造名の分析を通して、「凡河内」とは河内国と、津国(後の摂津国)が成立する以前における淀川右岸地域にまたがっておこなわれる仕奉を体現する名辞であったことを明らかにした。また、凡河内氏の仕奉内容や分布などに着目し、6世紀前半の継体期頃に、大阪湾および淀川・大和川水系の水上交通体制を整備する目的で凡河内氏が倭王権によって編成されたことを指摘した。これらの研究成果は、あたらしい古代史の会(2016年5月21日)や歴史学研究会古代史部会(2016年7月31日)、古代史サマーセミナー(2016年8月20日)等で口頭報告をおこなったうえで論文として成稿し、2017年に刊行予定の論文集や雑誌に掲載が決定している。 さらに、以上の研究成果をふまえたうえで、7世紀以前の倭国における地方支配制度とされる国造制と、職務分掌制度とされる伴造―部(民)制の関係について検討をおこない、実は国造と(地方)伴造が表裏一体の関係にあったとする見方を提起した。この研究成果は第114回史学会大会(2016年11月13日)で口頭報告をおこなっている。 他方、平安時代に新興貴族としてあらわれる菅原・秋篠・大枝氏の成立事情について検討をおこない、それぞれの氏族に固有の成立事情が存在することを明らかにした。この成果はあたらしい古代史の会(2017年3月11日)で口頭報告をおこなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究の初年度にあたる。「富豪層」出現の史的背景として国造に関する研究を進め、2本の論文を成稿した(いずれも2017年刊行予定)。また、国造と伴造に関する総合的な研究も進めており、史学会大会にて口頭報告を実施した。 さらに、平安時代初期における新氏族の成立に関する研究も並行して実施しており、口頭報告をおこなっている。 以上の研究状況に鑑みると、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度は個別の国造に関する分析が中心であった。今後は、それを踏まえたうえで「富豪層」が現れる以前の地域支配のあり方について総合的に検討したい。 それとともに、奈良・平安期における「富豪層」そのもののあり方について分析を進める。
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