2016 Fiscal Year Annual Research Report
幾何学的不変式論および確率論的手法を用いたケーラー・リッチソリトンの研究
Project/Area Number |
16J01211
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 良輔 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
|
Keywords | Kahler-Einstein metric / Kahler-Ricci soliton / balanced metric |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は大きく分けて3つの結果を得ることができた: 結果1:ケーラー・リッチフロー(KRF)の幾何学的量子化の構成 結果2:ケーラー・アインシュタイン(KE)計量の幾何学的量子化と,それに対応する幾何学的不変式論(GIT)的安定性の構成 結果3:量子化Ding汎関数のHessianの漸近挙動の解析
結果1について.KRFは任意のケーラー形式をKE計量に整形するような時間発展方程式である.KRFは幾何解析的視点からの研究が多く行われる一方で,幾何学的量子化に関する結果はあまり知られていなかった.私は,Bermanによって得られたBergman iterationを改良し,KRFに滑らかに収束するようなBergman計量の2重パラメータ列を構成することに成功した.この手法は多様体がCalabi-Yau,Fano,General typeの3つのすべての場合に対して有効である.結果2について.これは東大数理の斎藤俊輔氏との共同研究によるものである.我々は量子化KE計量の存在に対応する,新たなGIT安定性としてF-安定性を導入した.F-安定性はア・プリオリに全空間が正規でないようなテスト配位に対しても適用可能な安定性である.応用として,小野-佐野-四ツ谷のtoric 7-foldや,向井-梅村-Tian 3-foldが量子化KE計量の列を持たないことを示した.結果3について.Ding汎関数はKE計量を臨界点に持つ汎関数である.私は,量子化Ding汎関数のHessianの正値性の射影幾何学的視点からの別証明を与えた.また,その漸近挙動を,Berezin-Toeplitz作用素の漸近展開を用いて解析を行い,Dingの汎関数のHessianに然るべき意味で収束することを証明した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目の計画として掲げていた,量子化KE計量に対応するGIT安定性の定式化を完成させることができた.また,KRFの幾何学的量子化から,KRFを数値的に構成するプロセスについての理解が深まり,一般偏極化を考える上での大きな指針を得ることができた.
|
Strategy for Future Research Activity |
Fanoの場合のYau-Tian-Donaldson予想は一応の解決を見たが,K-安定とK-半安定の差がどれくらいあるのかに関しては,未知の部分が多い.そこで,偏極一般化と並行し,cone singularityを持つKahler-Ricci soliton(あるいは,KE計量)を用いて,K-半安定性の研究も行っていきたいと考えている.
|