2016 Fiscal Year Annual Research Report
化学混和剤の吸着作用を考慮したセメントの水和反応機構の精緻化に関する研究
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16J01593
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金 志訓 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | ケイ酸塩系表面含浸材 / コンクリート / 耐久性 / 炭酸化 / NMR |
Outline of Annual Research Achievements |
コンクリートの表面補修材として使われるケイ酸塩表面含浸材は土木学会からの「ケイ酸塩系表面含浸工法の設計施工指針(案)‘, 土木学会, 2012」などが出ており、表面にカルシウムシリケート水和物を作られて表面を緻密化する原理で補修しているが、非常に複雑なセメント水和物の変化に対して一つの式からの説明は無理がある。また、ケイ酸塩表面含浸材が炭酸化などの劣化に悪影響を及ぼすことが報告されている。そして本研究ではセメントペーストを用いてケイ酸塩表面含浸材との反応実験を行い、反応メカニズムおよび炭酸化への影響を把握した。反応メカニズム関する各測定の結果、今まで知られていたメカニズム以上が確認されており、それが炭酸化に与える影響に対して検討が必要と考えられる。ケイ酸塩表面含浸材が炭酸化に与える影響を確認するため、炭酸化促進実験を行い、XRDおよびNMRを用いて変化を観測する。各実験の結果、ケイ酸塩表面含浸材を入れてないサンプルより炭酸化物質の生成量が増えていることが確認されており、補修材のアルカリ成分が劣化に影響を与えていることが確認された。ケイ酸塩表面含浸材から生成されるカルシウムシリケート系水和物からのCa2+が溶出され炭酸化し、Ca2+がなくなったSi4+にAl3+やケイ酸塩表面含浸材アルカリ成分(Na+)が結合し、構造が変化している可能性が考えられる。アルカリ成分の変化について、23Na 3QMAS NMRを用いた分析から炭酸化によるNa+の変化が確認され、炭酸化後の構造や組成変化に関与していることが予想される。また、すでに炭酸化されたコンクリート表面でケイ酸塩表面含浸材を使う場合も、内部水和物の変化が予想され、劣化に影響を及ぼす可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
目標にしたセメントペーストを用いたケイ酸塩系表面含浸材の反応および炭酸化による変化を核磁氣共鳴装置を用いて観察することが順調にできていると考えられる。また、装置の使い方や適用については、当初に思ったより活用性が高くなることが予想される。今回測定しているケイ酸塩系表面含浸材以外の材料にも、核磁氣共鳴装置用いた分析を広く活用することができると考えられ、建築材料分野の全般で使われると考えられる。また、自分の専門分野とは違う核磁氣共鳴装置を、自分の研究分野に活用することによって理学系の核磁氣共鳴装置の専門家たちとの打ち合わせや相談を通じたことから、研究者として他の分野の研究者と協力しながら研究目標に到達するいい経験もできたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
セメントペーストを用いたケイ酸塩系表面含浸材の反応および炭酸化による変化を化学的に分析することについて、得られた結果に基づいて反応モデルの提案および現場調査が重要である。様々なモデル式および理論から反応機構を提案し、測定されたミクロなデータの現場適用のために検証を行う。それぞれの段階で得られた結果および現場調査の結果をまとめて反応および炭酸化の予測モデルを提案し、検討を行う。また、当初の計画より研究の進展が早いことから、化学的な分析以外に、供試体を用いた暴露試験や力学的な検討まで、研究を広げることができると考えられ、各段階で得られる結果および疑問点を解決しながら、次の段階まで進行することを目標とする。
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Research Products
(3 results)