2016 Fiscal Year Annual Research Report
15世紀イタリアの言語と絵画による理想都市表象とL・B・アルベルティの建築理念
Project/Area Number |
16J01642
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡北 一孝 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | レオナルド・ブルーニ / 理想都市 / アルベルティ / エクフラシス / 建築表象 / ルネサンス / 建築史 / 都市頌 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の研究成果として重要なのは、8月から9月にかけてのイタリアでの調査と、3月に採録が決定した論文である。 夏のイタリアでの調査は、ヴェネツィアからナポリまで踏破し、アルベルティが関与したとされる建築作品のうちで未調査であったナポリのカステル・ヌオーヴォの凱旋門を実見し、写真撮影と細部の観察を行った。そのほか、アルベルティ作品のデザインの源泉とされるラヴェンナのテオドリクス帝の霊廟と宮殿の調査も行った。また、15世紀イタリアの理想都市表象を考える上で、実際に理想都市を目指して大規模な都市改造が行われた、ヴィチェンツァ、フェッラーラ、ローマの都市構造を解析した。とりわけファッラーラとローマの二都市は、計画に際してのアルベルティからの影響が指摘されている。フェッラーラは都市の骨格は現在でもかなり保存されているため、フェッラーラを重点的に調査した。まだ論文等で具体的成果とはなっていないが、中世都市地区と15世紀に改造された地区とのつながり、広場と街路の計画など、アルベルティが思い描いていた理想都市との整合性を検討している最中である。 もう一方の理想都市表象であるが、ヴァティカン博物館所蔵の絵画作品などを中心に絵画の中の建築表象を調査した。こちらは現在目録を作成中である。最も力を入れたのは、理想都市を言語によって表象した事例である。とりわけ、15世紀の人文主義者レオナルド・ブルーニ(Leonardo Bruni, 1370-1444)の『フィレンツェ頌 Laudatio Florentinae Urbis』(1403-4)を中心にテクスト分析を行い、論文「レオナルド・ブルーニ『フィレンツェ頌』の建築エクフラシスを読む」(Arts & Media vol. 7掲載予定)としてまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究においては二つの大きな目的があった。 1. 言語と絵画による理想都市表象の目録作成 目録作成は順調に進んではいるが、調査が進むにつれて、対象とする絵画や文献の数が増えてきており、未読・未見資料が多く蓄積してきた。これは平成29年度後半から予定している在外研究によって消化できると考えている。 2. 言語による理想都市表象の分析の重要な鍵となる「エクフラシス」に関して研究を進め、国内学会において発表し、論文としてまとめる。 発表論文「レオナルド・ブルーニ『フィレンツェ頌』の建築エクフラシスを読む」では、エクフラシスそのものを中心テーマとした論文とはならなかった。しかし、15世紀の人文主義者レオナルド・ブルーニ(Leonardo Bruni, 1370-1444)の『フィレンツェ頌 Laudatio Florentinae Urbis』(1403-4)を中心にテクスト分析を通して、古代修辞学における技法であるエクフラシスについても十分に研究を進めることができた。こちらの成果もまた平成29年度中に公表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、言語と絵画による理想都市表象の目録作成を進め、年度末には完成させたい。そのため10月からはイタリアでの在外研究を始める予定である。今年度もまた引き続き言語による理想都市表象研究を推進するために、これまでに取り上げたブルーニ以外に、教皇ピウス二世のテクスト分析を進めていく。さらに今年度は、絵画による理想都市表象(ヴァティカン博物館のニコラウス五世礼拝堂の壁画を予定)の分析も進めることにより、15世紀の理想都市表象の事例分析を統合する足がかりとしたい。
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