2016 Fiscal Year Annual Research Report
ルドルフ2世治世下のプラハにおける絵画の自由学芸化の研究
Project/Area Number |
16J01801
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
川上 恵理 神戸大学, 人文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | バルトロメウス・スプランゲル / 画家ギルド / 同業者組合 / ルドルフ2世 / マニエリスム / 美術理論 / 神聖ローマ帝国 / プラハ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は1590年代から1610年頃のプラハにおける絵画の自由学芸化の動きの全体像を示すことである。その際、画家ギルドの一次資料を用いた歴史学の観点と、絵画等イメージ資料を用いた美術史学的観点の両視点を用いる。 2016年度はイギリス・ロンドンのヴァールブルク研究所で図像解釈学研究に関する書籍閲覧と図像収集を行い、チェコ・プラハでルドルフ2世期美術の専門家であるカレル大学哲学部教授ルボミール・コネチニー氏の指導を受けた。その結果、2016年5月に報告論文「ルドルフ2世治世下のプラハにおける芸術運動 ―バルトロメウス・スプランゲル作《知恵の勝利》の油彩画と版画を中心に―」(『鹿島美術研究:年報別冊』、鹿島美術財団、33号、2016年、pp. 123-134)を提出している。本論文では、《知恵の勝利》の版画は画家による絵画の地位の宣言を表していると解釈した。この論文によって、第24回鹿島美術財団賞優秀者に内定したので、2017年5月の鹿島美術財団の研究発表会にて発表予定である。 また、プラハの国立美術館および国立博物館のアーカイヴで16世紀末プラハの画家ギルドの一次資料を閲覧し、その草稿研究も継続的に行っている。2017年2月にその一部の成果を研究ノート「神聖ローマ皇帝ルドルフ2世の1595 年の勅書による周辺国ギルドへの影響 ―ハンブルクの画家ギルドからプラハの画家ギルドに宛てた書簡より」(『美術史論集』、神戸大学美術史研究会、17号、2017年、pp. [1]-[7])にまとめている。本書簡は絵画の自由学芸化に結び付く1595年のルドルフ2世の勅書の近隣国への影響を見る上で重要である。しかしながら、管見の限りこれまでその全文は出版されておらず、本研究ノートで初めて全文を掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね当初の計画通り、論文の発表を行い、ヴァールブルク研究所やプラハのアーカイヴ等での海外調査も行っている。ただし、一次資料の収集および読解の面においての利点のため、当初予定していなかった8ヶ月分の留学延長を行ったが、それゆえに2017年2月刊行の『美術史論集』(神戸大学美術史研究会)に一次資料の全文の翻刻とその訳を掲載することができた。本年度はほぼ通年海外に滞在していたため日本での研究発表を行うことはできず、また奨励費の使用内訳での旅費の配分に大幅な変更が生じたが、一次資料の収集読解は今後の研究の基盤となる作業であり、翌年度以降の研究成果につながると考えるため、予定外の留学延長から益することも大きく、計画はおおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年5月に鹿島美術財団賞優秀者として研究発表会で発表するため、その際現段階での考察に関して他の研究者の意見を問い、今後の研究に役立てる。また、研究発表のための一時帰国期間を除き、継続して2017年6月30日までプラハに滞在する予定である。同地では引き続き国立美術館および国立博物館のアーカイヴにおける一次資料の更なる収集および読解を行う。これらの成果を用いて、当初の予定通り、帰国後12月までに博士論文を完成させる。
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